(テスト)褒賞受賞者からのメッセージ

褒賞受賞者からのメッセージ

2023年度
最優秀理事長賞 冨樫 庸介
所属機関: 岡山大学 学術研究院医歯薬学域(医学系)
研究テーマ:抗腫瘍免疫応答における所属リンパ節の役割の解明
この度は、貴財団の研究助成の採択・御支援に加えて、最優秀理事長賞を頂きまして、大変光栄で、関係者の方々に心より御礼申し上げます。2021年に現所属で独立した研究室を持ち、立ち上げの大変なときに、貴財団から厚く御支援いただきました。お陰様で研究室の人も増え、何とか回せるようになっています。重ねて感謝申し上げます。
 私は医学部卒業後、呼吸器内科医として働いている中で普段の臨床で「偶然」出会った疑問から研究に取り組みはじめ、今は腫瘍免疫・腫瘍微小環境の研究に主に取り組んでいます。今回御支援いただいた内容は、今まであまり注目されてこなかった腫瘍の周辺にあるリンパ節に関する内容の研究です。前の研究室から独立したばかりで、オリジナリティーのある研究をしたいと思いながら研究を進めている中で、あまり専門ではなく普段なら無視してしまうような「偶然」見つけた結果について、「偶然」近くの研究室の先生が注目していたので始まった、、、という経緯があります。そして貴財団の助成に採択いただき、お陰様で今では大変面白い研究成果を出せるようになって、栄えあるこのような賞を受賞するに至りました。まだ完全には公表できていないのですが、今後もこのような「偶然」を大切に、本受賞も励みにして引き続き頑張って参る所存です。
 「学問」や「芸術」などはすぐに生活には直結しませんので、「余裕」みたいなものがないと取り組めないものだと常々思っています。そういった「余裕」が失われつつある本邦では、研究力の低下が叫ばれて久しい昨今です。私は医学部入学時には、普通に臨床をしようとしか頭になく、研究はあまり考えておりませんでした。しかし、ひょんな「偶然」から当時のボスの「余裕」にすがりながら研究に取り組み始め、今に至ります。今でも「余裕」がそこまであるわけではないのですが、研究者に「余裕」を生み出してくれる貴財団のような支援のお陰で何とか続けることができております。また、この度の貴財団の発表会では多くの素晴らしい講演を拝聴し、また「偶然」に出会うことができました。今後ともこのような「余裕」と「偶然」を提供する活動を継続してくださいますよう貴財団の益々の御発展をお祈り申し上げます。
最優秀理事長賞 新田 剛
所属機関:東京大学 大学院医学系研究科 免疫学
研究テーマ:二重抗原特異性を示すリンパ球の意義
私たちの研究にご支援をいただき、また最優秀理事長賞を賜り、誠にありがとうございます。4年ぶりの現地開催となった10月21日の研究報告会では、様々な分野の先生方の発表を拝聴し、素晴らしい研究成果の数々に大きな刺激と感銘を受けました。そのなかで本研究を選んでいただき、光栄の極みです。生涯忘れえぬ会となりました。選考委員の先生方に心より感謝申し上げます。
 私たちはT細胞の研究をしております。T細胞は抗原特異的な免疫応答の司令塔であり、1個のT細胞は遺伝子再編成によってつくられた1種類の抗原受容体(TCR)を発現する、と教科書に書かれています。しかしT細胞を深く研究していれば、2種類のTCRを発現するT細胞が少なからず存在することに気づきます。最近のシングルセルTCR-seq解析でも、そのような細胞が頻繁に検出されています。2種類のTCRを発現するT細胞「dual-TCR T細胞」は生体内にどのように存在し、何をしているのか? 私たちはこの課題を解決するため、独自のレポーターマウスを開発し、生体内のdual-TCR T細胞を検出することに成功しました。本研究によってdual-TCR T細胞の – というよりもT細胞全体の – 実態を明らかにすることができ、今後さらにその生理的・病理的意義の探求を進め、成果発表につなげてまいります。本研究助成をいただいたことで、免疫学の基礎研究を力強く進めることができました。あらためて感謝申し上げます。
 実は、私が最優秀理事長賞をいただくのは2011年度に続き二度目になります。今後は若い弟子たちが本賞を受賞できるよう、後進の指導に全力を尽くしてまいります。とはいえ、財団事務局によれば、本研究助成および本賞は生涯3回まで受給できるとのこと。これからも密かに己の腕を磨き、将来、全く異なる研究テーマで3回目の受給と受賞に挑戦し、選考委員の先生方に「またあいつか」と嫌がられることをめざして、科学の最先端に挑み続ける所存です。
竹中奨励賞 星野 歩子
所属機関:東京大学 先端科学技術研究センター
研究テーマ:エクソソーム上ITGβ1が司るがん進展機構の解明
この度は大変名誉ある賞を賜りまして、大変光栄に存じます。選考委員の皆様に心より御礼申し上げます。
今回受賞対象となった研究では、全ての細胞が産生するエクソソームといウイルス程の大きさの小胞に着目しております。エクソソームはタンパク質や核酸などの細胞情報を臓器から別の臓器へ、細胞から細胞へと運んでいます。この機構は体内にがん細胞が存在しているときにもみられ、がん細胞は転移する際にエクソソームを介して、未来転移先となる臓器を転移しやすい環境へ変化させていることがわかりました。我々の研究室では、この機構をもとに、がん細胞が産生するエクソソームの除去や取り込みを阻害する方法、さらには整えられた環境をもとに戻すことで転移抑制的な治療へつなげる研究を推進しております。本受賞を励みにして、今後もエクソソーム研究へ精進を重ね、邁進していく所存です。この場をお借りして、アステラス病態代謝研究会関係者の皆様、そして日頃から私の研究生活を支えてくださっている多くの先生方や研究室の皆さんに心より感謝申し上げます。
優秀発表賞 小松 紀子
所属機関:東京大学 大学院医学系研究科 免疫学
研究テーマ:関節リウマチの骨破壊誘導性細胞の同定と治療法の開発
この度は貴財団からの研究を支援いただき、研究助成の選考に携わっていただいた先生方、財団関係者の方々に心より御礼申し上げます。研究報告会で先生方の独創的な研究を拝聴することで刺激や気づきをえられたうえに、優秀演題賞を頂き大変光栄に存じます。
近年、線維芽細胞をはじめとするストローマ細胞による免疫制御に注目が集まっております。シングルセル解析などの解析技術の進展により、線維芽細胞は単に体を支持するだけではなく、関節、腸や肺をはじめとするさまざまな組織において緻密に恒常性を維持したり、炎症型や組織破壊型に代表される多様なサブセットが存在し、病態形成に重要な役割を果たすことが明らかになりつつあります。関節リウマチは代表的な自己免疫疾患の一つで、免疫系と線維芽細胞の相互作用が炎症や骨や軟骨の破壊につながります。関節リウマチの治療標的でもあるサイトカインTNFを全身性に過剰発現させたマウスでは関節の線維芽細胞が応答することで関節炎を発症することからも、関節の線維芽細胞のもつユニークな性質に興味をもって研究を進めております。本助成金をいただき、関節リウマチの病態において骨や軟骨を破壊する組織破壊型の線維芽細胞サブセットがつくられるしくみの一端が明らかとなりました。微小環境における恒常性維持と破綻における免疫系-間葉系連関の解析を通して、疾患メカニズムの解明と治療法の開発に繋がる研究を展開してまいりたいと存じます。末筆となりましたが、アステラス病態代謝研究会の関係者の皆様に改めて御礼を申し上げるとともに、本財団の益々のご発展を祈念申し上げます。
優秀発表賞 乘本 裕明
所属機関:北海道大学 医学研究院
研究テーマ:オーストラリアドラゴンの前障の役割の解明
この度は、アステラス病態代謝研究会の研究助成を賜り、また、研究成果に対して優秀発表賞を頂いたことに心から感謝申し上げます。今回ご支援いただいた研究は、まだ役割が明らかになっていない脳領域「前障」の研究です。私たちの研究室ではこれまでに、爬虫類が哺乳類と相同性の高い前障を持っていることに着目し、睡眠・覚醒との関連を研究してまいりました。研究支援期間中に、摘出した脳標本上で徐波睡眠やレム睡眠、そして覚醒様の状態を安定して再現することに成功しました。今後は、各状態における神経活動の詳細を解析することで、前障が睡眠時や覚醒時にどのような役割を担うのかを明らかにしてきたいと考えています。独立直後の経済的に不安定な時期に研究助成を頂けたことで、スムーズに研究室立ち上げを行うことができました。貴財団からご支援いただいたことを励みに、今後さらに研究を発展させていきたいと思います。最後になりましたが、選考委員の先生方ならびにアステラス病態代謝研究会の関係者の皆様に感謝を申し上げるとともに、貴財団の益々のご発展を心より祈念いたします。
優秀発表賞 山本 恵介
所属機関:東京大学 医学部部附属病院 消化器内科
研究テーマ:膵がん肝転移巣の代謝特性に注目した新規治療法の開発
この度は栄誉ある貴財団の研究助成金に採択いただきましたことを、心からお礼申し上げます。また、並み居る助成金採択者の中から、研究発表会で優秀発表賞という素晴らしい賞をいただけましたことは、研究者として大変光栄に存じます。私は、4年間の米国留学を経て、2年前より独立した研究グループを立ち上げました。帰国直後で、アイデアはあるけれど研究費がないという経済的に大変苦しい時期に、貴財団からの助成を頂けましたことは、資金面のみならず精神的にも大きな励みとなりました。本当にありがとうございます。
膵癌は極めて予後不良の難治癌です。いまだに有効な分子標的薬も免疫療法もなく、その治療は困難と言わざるを得ません。膵癌は、その腫瘍内部に極端な低栄養状態を形成することが特徴ですが、このような環境下で生存するため、膵癌細胞は様々な方法で代謝経路を改変しています。私は、こうした膵癌の代謝特性を理解することで、新しい治療法の開発を目指してきました(Yamamoto et al. Nature 2020; Yamamoto et al. Autophagy 2020; Yamamoto et al. J Gastroenterol 2022; Yamamoto et al. Curr Opin Biotechol 2023)。例えば、非必須アミノ酸の一つであるセリンは細胞の生存・増殖に重要な役割を果たします。多くの癌では、その細胞増殖速度を上げるために、セリンの生合成経路を過剰に活性化していることが知られています。私達は、驚くべきことに、一部の膵癌ではこのセリン生合成経路を活性化するどころか、完全に喪失していることを発見しました。さらに、こうした膵癌細胞は自分でセリンを合成することを放棄し、代わりに腫瘍に分布する感覚神経細胞から供給されるセリンに依存して生存していること、そしてその阻害により治療効果が得られることを見出しました(Banh & Yamamoto et al. Cell 2020)。
しかし、これは膵原発巣での話です。膵癌治療における最大の難敵は肝転移巣で、この肝転移巣において、膵癌細胞がどの細胞からセリンの供給を受けているのかは不明です。そこで、本研究課題では、代謝恒常性維持の肝(きも)である、肝細胞に着目しました。そして、栄養をひたすら貪欲に消費する膵癌細胞と、血中代謝産物の変化に対応してこれを正常範囲に戻そうとする肝細胞の間で、代謝産物のやりとり(クロストーク)が起こっているのではないかという仮説のもと、研究を行っています。
本研究テーマは、かなりの長期間にわたって温めてきたものです。この自分のお気に入りの研究テーマに、実際に挑戦する機会(資金)を与えたくださった公益財団法人アステラス病態代謝研究会と関係者の皆さまに心から御礼を申し上げますとともに、貴財団の益々のご発展をお祈り申し上げます。


2022年度
最優秀理事長賞受賞者 石黒 啓一郎
所属機関: 熊本大学 発生医学研究所・染色体制御分野
研究テーマ:生殖細胞における減数分裂の制御機構と不妊原因の解明
この度は、貴財団から研究助成のご支援を頂きましたこと厚く感謝申しあげます。さらに多くの優れた研究発表の中から本研究を高く評価していただけたこと、誠に光栄にございます。また今回の報告会では、選考委員の先生方や様々な分野の研究者のご発表・ご意見を拝聴することができまして、今後の私どもの研究にも大いに刺激となる貴重な経験となりました。この度はオンライン開催ではありましたが、またどこかの機会で皆様と再会・交流できることを願っております。
私のグループでは、生殖細胞に見られる減数分裂の制御の仕組みについて研究を進めております。とりわけ生殖細胞が体細胞分裂から減数分裂に切り替わるメカニズムは、生物学の長年の謎とされていました。最近我々が同定したMEIOSIS initiator (MEIOSIN)は精巣および卵巣で生殖細胞が体細胞分裂から減数分裂へと移行する時期に一過的に核内に発現して、減数分裂関連遺伝子の転写活性化因子として働くことがわかりました。減数分裂の開始因子の親玉とも言える転写因子の発見から、さらに演繹的に多くの未解析遺伝子がそのターゲットと推測されました。この度ご支援いただきました研究では、そのターゲット遺伝子の生殖細胞での機能を解析することを目的としました。実際、それらの中から減数分裂の染色体制御や生殖発生の制御に必須の機能を果たす新規の遺伝子を複数同定することに成功しました。これにより、生殖発生に連動した減数分裂の制御様式やこれまでに先行研究で報告のない哺乳類に固有の調節システムがあることを見いだすなど、基礎生物学の学術的価値の創出のみならず不妊原因の解明にも資することが期待されます。今後も引き続き、減数分裂と生殖発生における新たな制御機構の仕組みの解明を目指したいと思います。
 この度の研究助成と最優秀理事長賞の受賞を励みに、今後もなお一層研究に邁進する所存でございます。末筆ながら、アステラス病態代謝研究会の関係者の皆さまに心から御礼申し上げますとともに、貴財団の益々のご発展をお祈り申し上げます。
最優秀理事長賞受賞者 田中 克典
所属機関:東京工業大学 物質理工学院 応用化学系
     理化学研究所 開拓研究本部 田中生体機能合成化学研究室
研究テーマ:マウス内での芳香環合成によるがん治療研究
 この度は、研究助成にご採択いただくとともに、最優秀理事長賞まで頂戴し、審査員の先生を始めとする関係者の皆様に心より感謝申し上げます。最優秀理事長賞など全く予想しておりませんでしたので、オンライン上で最後に名前を読み上げられたときには慌てふためきました。
 私達の研究室では、10年ほど前からがんを始めとした体内の疾患部位で薬剤を「現地合成」し、疾患の現地で選択的に機能を果たすことによって副作用なく治療することを目指して研究を行ってまいりました。「生体内合成化学治療」と名づけたこの戦略に、当初は「クレイジーな考え方である」、「君には絶対に不可能だ」と叱咤激励いただきましたが、研究室の学生や研究員が努力を重ねた結果、(1)血中や臓器、あるいは細胞内でも触媒的に反応を起こすことのできる遷移金属触媒システム、そして(2)体内の臓器に触媒を自在に運搬できる糖鎖デリバリーシステムを開発し、ここ数年でマウス体内の標的の臓器や細胞で反応を行うことが可能となってまいりました。しかし、「修飾反応」や「脱保護反応」は可能でしたが、分子の骨格を体内で「合成」することはやはり困難でした。
 本助成にサポートいただき、薬剤の骨格に普遍的に存在する芳香環を金属触媒反応で自在に合成することが可能となり、さらに最近、マウス体内のがん部位で触媒的に薬剤骨格を「合成」して、がん治療することに世界で初めて成功いたしました。本結果によって、多くの医学部の先生や製薬企業の方々に興味を持っていただき、多くの皆様に使用していただける汎用的技術を目指して研究を展開しています。この「生体内合成化学治療」は、新しい化合物を生み出すのではなく、これまで副作用のために制限されてきた薬剤を現地で調達することによって、古き良き化合物群を見直し、復活させる新モダリティー、「分子ルネッサンス」です。10年後には、薬剤開発の有力な戦略となることを目指してさらに研鑽いたします。
 最後になりましたが、私は研究助成に採択していただいた時期に、理化学研究所の研究室に加え、東京工業大学にも研究室を主宰させていただく幸運に恵まれました。新しい研究室をスタートさせるにあたり、本助成にどれだけお世話になったかは言うまでもございません。アステラス病態代謝研究会の関係者皆様に心より御礼を申し上げますとともに、貴財団の益々のご発展をお祈り申し上げます。
最優秀理事長賞受賞者 塚崎 雅之
所属機関:東京大学 大学院医学系研究科 骨免疫学寄付講座
研究テーマ:⾻組織の発⽣と維持の分⼦機構解明
この度は、貴財団からの研究支援ならびに最優秀理事長賞という栄誉ある賞を賜り、大変光栄に感じております。選考に当たってくださった先生方、財団関係者の方々に心より御礼申し上げます。私は学部学生時代から「骨」に興味を持っており、硬い骨がどのようにしてつくられ、壊されるのかに関して研究を続けて参りました。本研究では、シングルセル解析技術とマウスジェネティクスを用いて、骨を壊す「破骨細胞」の運命決定機構と、骨をつくる「骨格幹細胞」の機能解明に取り組み、破骨細胞が多段階的なプロセスを介して成熟してゆくこと、性質の異なる骨格幹細胞どうしの相互作用が骨の成長に重要であることを見出しました。生命科学はシングルセル時代を迎え、骨生物学もこれまでにない解像度で議論されつつありますが、1細胞レベルで分類・定義された集団の機能的な重要性や、他集団との相互作用など、新たな謎を生み続けています。シングルセル解析やノックアウト実験などの要素還元的な実験手法を駆使しつつ、骨をつくるシステム、壊すシステム、そして両者を制御する免疫系や神経系との連関を含め、俯瞰統合的な視点から骨を研究してゆくことで、様々な骨疾患の理解と制御に繋げたいと考えています。本受賞を励みに、より一層研究に精進してまいりますので、引き続きご指導を賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。末筆にあたり、アステラス病態代謝研究会の関係者皆様に深く感謝申し上げますとともに、貴財団の益々のご発展をお祈り申し上げます。
竹中奨励賞受賞者 植木 紘史
所属機関:東京大学医科学研究所・ウイルス感染部門
     国立国際医療研究センター・研究所・
     国際ウイルス感染症研究センター・呼吸器系ウイルス感染症研究部
研究テーマ:新型コロナウイルスの2光子生体肺イメージング解析
 この度は私共の研究にご支援をいただきまして誠にありがとうございます。また、第52回研究報告会にて数多くの素晴らしい研究の中から竹中奨励賞に選出いただきましたこと大変光栄に存じます。
 私共は、呼吸器系ウイルスの病原性発現機構の解明ならびにワクチン・抗ウイルス薬の効果評価系の確立を目的として、感染動物を個体~細胞レベルで解析できるイメージングシステムの開発を進めてきました。呼吸器である肺は、外界と接し血流も豊富であり感染症や自己免疫疾患、がんの研究対象として重要や器官です。一方で、呼吸のために拡張と収縮を繰り返す肺は、視野の固定が難しくこれまでいくつかの方法論が試されてきましたが生体イメージングには不向きと考えられており、インフルエンザなどに代表される重度の炎症を伴う肺を顕微鏡下で観測することは困難とされてきました。私共は、肺の呼吸運動を抑える吸引保定装置を独自に開発することで、2光子励起顕微鏡下で生きた細胞の動きや形態変化を高解像度で観察できる実験系の確立に成功し、インフルエンザ肺炎の病態メカニズムの一端を明らかにしてきました(Nature Commn. 2016, PNAS 2018, Nature Protoc. 2020)。本イメージングシステムをCOVID-19研究に適用することにより、COVID-19の病態メカニズムの解明が大きく進展すると考え、本研究計画をスタートさせました。研究当初のまだ何も成果の無い段階より貴研究会より厚いご支援を頂けましたことは大変有難いことであると同時に何よりの励みとなりました。これまで観察することのできなかった感染個体における免疫細胞の動きという新たな知見は、COVID-19に対する免疫応答の理解を深め、新しい治療戦略を目指した医学の発展に大きく貢献できるものと信じて今後も精進してまいります。
 最後ではありますが、選考委員の先生方ならびにアステラス病態代謝研究会の関係者の方々に深く感謝申し上げるとともに、皆様の益々のご発展をお祈り申し上げます。
優秀発表賞受賞者 小川 亜希子
所属機関:東北大学 加齢医学研究所
研究テーマ:RNA由来新規内分泌因子の探索による緑内障病態解明
この度は、貴財団からの研究支援ならびに研究報告会にご参加された先生方の投票による優秀発表賞に選出していただき心より感謝申し上げます。緑内障は慢性進行性の視神経障害で、日本の中途失明原因の第一位を占める社会的意義の非常に大きな疾患ですが、原因は不明であり介入が唯一可能な因子は眼圧のみです。私は眼科医で緑内障診療・臨床・基礎研究ライフワークとして行っておりますが、2019年より現職の東北大学加齢医学研究所(加齢研)に赴任し、RNA修飾代謝の観点より緑内障研究を行っております。加齢研は超高齢社会に突入した我が国における健康社会維持・健康長寿の実現のため加齢医学研究に特化した研究所であり、基礎研究で生まれたシーズを臨床研究へシームレスに応用するための多階層構造をとる国内随一の研究所であり、私の研究を遂行するのに最適な環境です。本助成と受賞は私にとって研究継続と発展の大きなモチベーションとなりました。研究を通じて社会の課題と向き合い、真に価値のある生体の仕組みを解明することで社会に還元・貢献できるかを考えながら、今後も精力的に研究を展開していきたいと思っております。最後になりますが、貴財団関係者の皆さまに心から御礼申し上げますと共に、益々のご発展をお祈り申し上げます。
優秀発表賞受賞者 籠谷 勇紀
所属機関:愛知県がんセンター
研究テーマ:疲弊T細胞の形成初期段階に関わる分子機構の解明
 この度は、貴研究会の第52回研究報告会において優秀発表賞をいただくことができ、誠に感謝申し上げます。この度ご支援いただいた課題は、私が以前から取り組んでいる、がんに対する免疫細胞療法を改良するための研究開発です。特にBlimp-1というエピジェネティック因子に着目した遺伝子修飾を通じて、がんの治療に用いるT細胞が長期間に渡り抗腫瘍効果を誘導できるように改変できることに成功しました (Yoshikawa et al. Blood 2022)。この研究分野では、キメラ抗原受容体 (CAR)導入T細胞療法が一部の血液がんに対して成功をおさめ、臨床に導入されて3年が経過しました。しかし多くのがんでは臨床応用に至っておらず、まだまだ発展途上の段階であると言えます。このためアカデミアにおける基礎研究が重要な位置づけを占めており、私の研究室でも少しでも研究の前進に貢献できるように日々精進しているところであります。今回の研究成果を基盤として、さらに臨床への導出を意識した研究開発を進める所存です。
 私は2019年10月より愛知県がんセンター研究所において研究室を主宰する機会をいただきました。研究室立ち上げ時においては備品の整備や人材雇用など、何かと研究資金が必要となります。本助成金は、まさに独立直後の時期に採択をいただいたことから、研究環境の整備と推進に極めて大きな役割を果たしたことは言うまでもありません。それに加えて、今回の受賞、また研究報告会において多くの選考委員の先生方から激励のお言葉をいただき、今後の研究に向けて大変な励みになりました。こういった研究助成が草の根の研究活動、特に若手研究者のごく初期の研究着手・奨励に大きな役割を果たしていることを実感致しました。特に本研究内容をまとめた学術論文は、私の研究室での最初の論文であり、第一歩を踏み出す大きなご支援をいただいたことになります。
 アステラス病態代謝研究会の関係者の皆様にこの度の御支援について改めて御礼を申し上げるとともに、貴会の益々のご発展を祈念致します。
優秀発表賞受賞者 楠山 譲二
所属機関:東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 生体情報継承学分野
研究テーマ:子の肥満を防ぐ妊娠期運動-胎盤シグナルの解明
 この度は、貴財団の研究助成に採択していただき、誠にありがとうございました。留学から帰国後、独立した研究環境を整備する上で大変貴重な支援となりました。また成果発表会においては、優れた研究を展開されている発表者の方々の互選によって選出される優秀発表賞を賜ったことを、大変光栄に存じています。
 私は、両親の生活習慣や特性が産まれる子にどのように伝わるか、に興味をもち、特に妊娠期のみに形成される特徴的臓器である胎盤の役割に注目しています。これまでの研究成果で、妊娠期の運動は子の将来の肥満リスクを低減する分子メカニズムを実証し、その過程で胎盤が親の生体情報を伝達する器官であるという着想に至りました。我々が同定した運動惹起性の胎盤由来タンパク質であるsuperoxide dismutase 3 (SOD3)は、胎児肝臓のエピジェネティクス改変を誘導することで、子の糖代謝能を向上させる効能を持ちます(Kusuyama et al. Cell Metabolism. 2021, Kusuyama et al. Diabetes. 2022)。これらの成果をもとに、本研究助成では「妊娠期の運動がどのように胎盤へとシグナルを伝えるか」という母体臓器、胎盤、子の臓器機能の連関を理解するために重要な課題に取り組むことができました。運動情報の世代を超えた伝播機構を解明する上で有望な多くのデータが揃い、大きな成果に繋げられる手ごたえを得ています。
 最後になりましたが、選考委員の先生方ならびにアステラス病態代謝研究会関係者の皆様に感謝申し上げるとともに、貴財団の益々のご発展を心より祈念申し上げます。


2021年度
最優秀理事長賞受賞者 齋尾 智英
所属機関: 徳島大学先端酵素学研究所
研究テーマ:液-液相分離と神経変性疾患の動的構造基盤
 この度は、研究助成に採択いただいたことに加え、大変栄誉ある賞をいただき、誠に有難うございます。また、今回の報告会はオンライン開催となり、画面越しとはなりましたが、選考委員の先生方や助成金受領者の先生方と研究交流ができ、大変有意義な時間を過ごすことができました。
 私の研究では、分子シャペロンがタンパク質の液-液相分離現象の制御因子として機能するのではないか、という仮説に基づいています。実際に、いくつかのシャペロンについては、従来から言われていた新生タンパク質のフォールディング制御の機能に加えて、液-液相分離におけるタンパク質の機能的集合を調節する機能があることが明らかになってきています。私は、こうしたシャペロンの新たな機能的側面に注目し、分子レベルからそのメカニズムを明らかにすることを目指しています。特に、私の研究では、核磁気共鳴 (NMR) 法を用いた構造生物学研究を主体としていますが、NMR法は、溶液中の分子をアミノ酸残基レベル、または原子レベルの分解能で観測することができる手法です。特に、シャペロンや液-液相分離タンパク質などのような、動的・流動的なシステムの解析を得意としています。今後も、NMRを用いた動的構造解析によって、シャペロンによる液-液相分離制御のメカニズムを明らかにし、神経変性疾患の分子病態を新たな側面から明らかにしていきたいと考えています。
 今回いただいた研究助成期間中には、北海道大学から徳島大学へと異動し、新たに研究室を立ち上げることになりました。研究機材の移設や研究室環境のセットアップにおいては、貴財団からの研究助成が大きな助けになりました。重ね重ね、御礼申し上げます。
 最後に、まだ基礎的な段階にある本研究についてご支援いただき、さらに高く評価していただけたことを大変嬉しく思います。今後も、今回の研究助成、並びに受賞を励みに、一層研究に邁進する所存です。貴財団関係者の皆さまに心から御礼申し上げますとともに、貴財団の益々のご発展をお祈り申し上げます。
最優秀理事長賞受賞者 清水 逸平
所属機関:順天堂大学医学部内科学教室 循環器内科学講座
研究テーマ:加齢性疾患における老化促進代謝物質の病的意義の解明
 この度は貴財団の研究助成に採択いただき誠にありがとうございます。また、最優秀理事長賞を賜りましたことを先行委員及び財団関係者の方々に厚く御礼申し上げます。これまで私は加齢性疾患(心不全や肥満、糖尿病など)における細胞レベルでの老化や全身の代謝不全の意義について報告してきました(Nat Med 2009、Cell Metab 2012、2013、2014、J Clin Invest 2010、2014、Cell Rep 2018、Sci Rep 2019、2021、2021、J Mol Cell Cardiol 2015、2019、Nature aging 2021)。老化のプロセスには依然として未解明な謎が存在します。老化は一定の制御機構を伴いますが、同じ時相で全身の臓器が機能低下をきたす分子基盤は未だ不明です。最近私は、加齢及び加齢性疾患に伴い血液や臓器で増加する代謝物質のうち老化形質を促進するものを「老化促進代謝物質(Senometabolite)」と新しく定義しました。本研究課題において、老化促進代謝物質が「加齢同期(Sync-aging)」の中心的役割を担うという仮説の検討と病的意義の解明に挑みました。加齢及び加齢性疾患モデルマウスの血液や臓器を用いてメタボローム解析を行い、バイオインフォマティクスの手法を用いて検討を重ねた結果、心不全や加齢、肥満ストレスに伴い機能不全に陥った臓器に由来する老化促進代謝物質が血液中で増加することがわかりました。また、これらの代謝物質が心臓や骨格筋、血管の老化形質を促進し心不全やサルコペニアの病態が増悪することが明らかになりました。一部の老化促進代謝物質はミトコンドリア機能不全を惹起するため、心不全やサルコペニア、パーキンソン病やアルツハイマー病といった疾患はひょっとしたら一つのシンドロームではないかと考えるに至りました。これらの疾患をSenometabolite related diseases (SRD)と包括的に定義し、老化促進代謝物質を標的とした疾患横断的治療法を開発したいと現在考えております。本研究助成の採択、そして最優秀理事長賞を通して勇気をいただきました。皆様のご期待に答えられるよう今後も一生懸命努力を重ねてまいります。まだまだ若輩者ですので引き続きご指導を賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。このたびは誠にありがとうございました。
最優秀理事長賞受賞者 村居 和寿
所属機関:金沢大学 医薬保健研究域 保健学系 病態検査学講座
研究テーマ:新規免疫治療法開発に向けた肝癌微小環境の解明
 この度は、貴財団の研究助成に採択していただき誠にありがとうございます。また、成果発表会において最優秀理事長賞にご選出いただきましたことを大変光栄に存じます。コロナ禍のためZoomでの開催ではございましたが、普段お聞きすることができない様々な分野の先生方のご発表・ご意見をお聞きすることができ、大変貴重な経験となりました。
 今回ご支援いただきました研究内容は、肝細胞癌に対する新たな免疫治療法の開発のための研究です。近年、がん細胞が免疫細胞の働きにブレーキをかけることで、免疫細胞の攻撃から逃れていることが明らかになってきました。このブレーキを解除することで免疫細胞を再活発化させ、がん細胞を攻撃できるようにする治療法として、免疫チェックポイント阻害療法が考案されています。中でも、PD-1/PD-L1を標的とした免疫チェックポイント阻害療法は、悪性黒色腫をはじめ多種の固形がんに対し有効性を示しています。しかしながら、肝細胞癌に対する免疫チェックポイント阻害療法の効果は十分ではなく、今後更なる改善が求められています。
 私たちは、がん細胞自身が発するシグナルにフォーカスした研究から、免疫抑制性のがん微小環境を形成する原因の究明を目指しました。肝細胞癌の組織を対象に行った網羅的遺伝子発現解析から、がん免疫を負に制御する新たな遺伝子を同定しました。興味深いことに、この遺伝子を欠損させた肝細胞癌では、免疫の活性化を伴ったがん微小環境形成が起こり、免疫チェックポイント阻害療法の効果が飛躍的に向上することがわかりました。今後は、同定した遺伝子のさらなる解析から、肝細胞癌に対する有効な新規治療法開発に尽力していきたいと考えております。そして、この受賞に恥じぬよう、社会に還元できるような研究成果を挙げることを目標に日々精進して参ります。また、この場をお借りいたしまして、本研究に携わっていただきましたすべての共同研究者の方々に心より感謝申し上げます。
 最後になりましたが、アステラス病態代謝研究会の関係者皆様に心より御礼を申し上げますとともに、貴財団の益々のご発展をお祈り申し上げます。
竹中奨励賞受賞者 大内 梨江
所属機関:東京医科歯科大学 統合研究機構 先端医歯工学創成研究部門 創生医学コンソーシアム
研究テーマ:多細胞系ヒト肝臓オルガノイドを用いた交感神経によるNASHの制御機構の解明
この度は、貴財団からの研究支援ならびに竹中奨励賞という大変栄誉ある賞にご選出頂き、心から感謝申し上げます。私が所属する武部貴則研究室は、長年、自発的に組織化するオルガノイドと呼ばれるミニチュア臓器を生体外で創出する技術の研究開発をしてまいりました。近年、我々は、iPS細胞やES細胞といったヒト多能性幹細胞を用いて、肝臓の主要な細胞である肝細胞に加え、肝常在性マクロファージであるクッパー細胞や肝線維化の役割を担う肝星細胞を内包した多細胞からなるヒト肝臓オルガノイド(Human liver organoid: HLO)の創出に成功しました。そして、HLOは、近年急速に世界中で流行している代謝性肝疾患「非アルコール性脂肪肝炎(Nonalcoholic steatohepatitis: NASH)」の病態を生体外で再現することを世界で初めて可能としました。現在、我々は、いまだ有効な治療薬がないNASHの創薬開発を目指し、HLOを用いてNASHの病態進展の新たなメカニズムの解明に取り組んでおります。今回の受賞を励みに、より一層精進していく所存です。最後になりましたが、アステラス病態代謝研究会の関係者皆様に心より御礼を申し上げますとともに、貴財団の益々のご発展をお祈り申し上げます。
優秀発表賞受賞者 井上 大地
所属機関:神戸医療産業都市推進機構 先端医療研究センター 血液・腫瘍研究部
研究テーマ:スプライシングによるクロマチン3次元構造の制御機構の解明
 この度は私どもの研究をご支援頂きまして有難うございました。さらには2021年度研究報告会にて優秀発表賞を頂きましたこと、心より御礼申し上げます。
 私は「スプライシングによるクロマチン3次元構造の制御機構の解明」という内容で研究を進めて参りました。SF3B1遺伝子は癌横断的に最も高頻度に変異が認められるスプライシング制御遺伝子ですが、その下流標的としてブロモドメインファミリー分子のBRD9がスプライング異常に伴うNMDの機序により分解される現象を報告して参りました。今回、生物学的なフェノタイプとしても、BRD9の喪失が重要な役割を果たしていることをノックアウトマウスの解析などを通して明らかと致しました。このBRD9という分子をさらに掘り下げていくと、クロマチン3次元構造に重要なCTCFとゲノム上で共局在することを見出し、ではBRD9がスプライシング異常により喪失することで、どのようなクロマチン構造の変化が生じるのか?という問いに対して研究を進めて参りました。プロジェクトは現在も進行中ですが、CTCFの結合を促進し、エンハンサー・プロモーターループを増強する方向へと作用することをゲノムワイドに観察しております。詳細な分子基盤について解析途上ではありますが、スプライシングという転写後制御機構と、遺伝子発現に重要なクロマチン3次元構造が予想外のつながりを見せ、セントラルドグマを彩る経路を導けていければ、と考えております。
 本受賞を励みにして、クロマチン制御の未知の制御機構の解明に向けて、そしてSF3B1変異腫瘍の新規治療応用に向けて、より一層精進して参りたい所存でございます。また、共同研究者の先生方をはじめ、ご協力いただいたすべての方々にこの場を借りて御礼申し上げます。末筆ではございますが、選考委員の先生方ならびにアステラス病態代謝研究会関係者の皆様に感謝申し上げるとともに、貴財団の益々のご発展を心より祈念申し上げます。
優秀発表賞受賞者 高橋 重成
所属機関:京都大学白眉センター
研究テーマ:イオンチャネルの変異が発がんに与える影響の解析
この度は第51回研究報告会にて、優秀発表賞を頂き大変光栄に思います。発表者の方々の相互投票にてご評価頂いたのは、とても励みになります。
 私が研究助成金に申請した際はちょうどアメリカから帰国したタイミングであり、取得研究費がゼロの状態でした。そのような状況下で、アステラス病態代謝研究会から研究助成金を頂けたのは非常に有難く、なんとか日本での研究活動をスタートすることができるようになりました。帰国してからスタートさせた研究テーマについては、まだ論文として発表できてはおりませんが、想定以上の研究結果が得られており、またAMED PRIMEや学術変革領域Bの領域代表に選出して頂くなど、順調に進んでおります。私の専門は「生体ストレス」であり、ストレスの本質および全体像にできる限り迫るべく、現在分野横断的に様々な研究を展開しております。多岐に渡る研究テーマの中でも、がん研究は私の中で土台となるテーマであり、研究成果を出すことを念頭に置きつつ、挑戦的な課題に取り組むことで、生体ストレスが織りなす生物学の本質をどんどん解明していきたいと考えております
 末筆ながら、ご支援と賞を賜りましたことに深く感謝申し上げますとともに、アステラス病態代謝研究会の益々のご発展を祈念いたします。
優秀発表賞受賞者 山城 義人
所属機関:筑波大学 生存ダイナミクス研究センター
研究テーマ:血管壁のメカニカルストレス応答機構の解明
 この度は、貴財団からの研究支援ならびに第51回研究報告会にて優秀発表賞に選出頂き、心から感謝申し上げます。
 私の研究課題は、「血管壁のメカニカルストレス応答機構の解明」です。血管病発症に起因する根本的なメカニズムの理解と、創薬シーズ、バイオマーカーといった臨床応用のための基盤を構築することが研究の目的です。助成期間の間に、細胞外マトリクスThrombospondin-1(Thbs1)が伸展刺激応答において、メカニカルストレス応答の調節因子であるYes-associated protein (YAP)の核内移行を制御しうることを明らかにしました(Yamashiro et al. PNAS, 2020)。また、大動脈瘤形成に寄与するEarly growth response-1 (Egr1)-Thbs1の活性化が細胞膜表面のプロテアーゼ活性化型受容体(PAR1)を介すること(Shin et al. ATVB, 2020)などを報告させて頂きました。本研究を通じて、現象を観察することの重要性を痛感しております。大血管は体の深部にあるため、ライブイメージングでの観察が困難です。今後は、生体組織観察のための血管オルガノイドの作製や、ライブイメージング解析手法の開発にも注力していきたいと考えております。
 末筆ではありますが、選考委員の先生方、ならびに研究報告会で投票をして頂いた採択者の方々、アステラス病態代謝研究会関係者の皆様に厚く御礼申し上げるとともに、貴財団の益々のご発展を心より祈念致します。


2019年度
最優秀理事長賞受賞者 神谷 真子
所属機関:東京大学 大学院医学系研究科
研究テーマ:カルボキシペプチダーゼ活性検出蛍光プローブの開発
 この度は、貴財団からの研究支援ならびに最優秀理事長賞にご選出頂きまして、心から感謝申し上げます。今回ご支援いただいた研究は、カルボキシペプチダーゼという酵素と反応して初めて蛍光を発する分子(蛍光プローブ)の開発です。私たちの研究室ではこれまでに、がんで亢進している酵素と反応して初めて光る蛍光プローブを開発し、それを用いたがん迅速検出・診断法を確立することを目的に研究行ってまいりました。その結果、アミノペプチダーゼなどの酵素を標的とした蛍光プローブが一部のがん種の可視化に有効であることがわかってきた一方で、可視化できないがん種も多く、他の酵素に対する蛍光プローブを開発する必要があることも示されてきました。そこで、今回新たにカルボキシペプチダーゼに対する蛍光プローブを設計・開発し、それを臨床検体に適用した結果について報告会でお話させて頂きました。このように私たちは、がんが持つ特徴を可視化する分子を化学に基づき開発することで、新たな医療技術が創出できると考えて研究を進めております。貴財団からご支援いただきましたことを励みに、今後さらに研究を発展させていきたいと思います。最後になりましたが、アステラス病態代謝研究会の関係者皆様に心より御礼を申し上げますとともに、貴財団の益々のご発展をお祈り申し上げます。
最優秀理事長賞受賞者 阪口 雅司
所属機関:熊本大学 大学院生命科学研究部(代謝内科学)
研究テーマ:褐色脂肪組織の維持及び再生に関わる新規標的分子解析
 この度は、貴財団の研究助成に採択していただき誠にありがとうございます。さらに、成果発表会を開催していただき、私共の研究成果を著名な審査委員の先生方の前で紹介させていただきましたこと、大変貴重な経験となり誠に有り難く御礼申し上げます。「褐色脂肪細胞の維持及び再生に関わる新規標的分子解析」のタイトルで最新の成果をお話しさせていただきました。インスリンシグナルの研究は長年、糖尿病研究の最も重要なテーマの一つですでに詳細にわたる分子機序の解明が進んでいると考えられていましたが、熊本大学生命科学研究部荒木栄一教授の研究室からハーバード大学ジョスリン糖尿病センターのC.R. Kahn教授の元に留学したことを契機に、インスリンシグナルの詳細な解析を脂肪細胞で行ってみようと研究を開始しました。インスリンレセプター(IR)とIGF1Rのシグナルの役割を成熟した脂肪細胞で調べることは通常の遺伝子欠損法では不可能ですので、adiponectinプロモーターをタモキシン刺激で誘導することのできるマウスを用いてIR/IGF1Rの両方を欠損させました。この実験で脂肪細胞のインスリンシグナルは全身の代謝維持に必須であることを示した最初の研究となりましたので、このマウスを用いて、インスリンシグナルの詳細を明らかにすることに取り組みました。様々な条件でプロテオミクス解析を展開して、IRのβ鎖に結合する転写因子としてFoxK1を同定することができました。この研究には2つの生物学的、医学的な意義があります。一つは、インスリン刺激でIRβ鎖が細胞膜から細胞質へ取り込まれたあと、核内に移動するということです。これまで、多くの研究者がIRβの核内での存在を免疫沈降で認めていたようですが、それ以上の詳細な解析はされていませんでした。今回、IRβが核内に移行する際に同時にFoxK1/2も、ともに核内に移行することを見つけましたことから、より重要な生物学的意義があるのではないかと考えました。ほぼ同時期に、Cell誌に同様の現象が報告され、奇しくも2019年はIRβの核内移行に関して30年ぶりに見直しをするきっかけの年となりました。そしてもう一つの発見は、インスリンシグナルによる転写制御因子としてFoxO1が主流とされていましたが、新たに同じフォークヘッドファミリーのFoxK1が登場したことです。FoxO1が転写のnegative制御をしているのに対してFoxK1は転写のpositive 制御を担うことが明らかになりました。この経路は脂肪細胞の代謝のnegativeとpositiveのバランスを制御する重要な働きをしていて、脂肪細胞のミトコンドリアの増殖、維持に深くかかわっていると考えられますので、今後その詳細な機能をin vivoで明らかにして行きたいと考えています。
 本成果を、深くご理解いただき、最優秀理事長賞を拝受いたしましたこと、まことに光栄に存じ、感謝申し上げます。この栄誉を励みに一層、研究に邁進してまいります事をお誓い申し上げます。
竹中奨励賞ならびに優秀発表賞受賞者 羽鳥 恵
所属機関:慶應義塾大学 医学部
研究テーマ:概日時計による食事代謝の制御メカニズムの解明
 この度は研究をご支援頂きまして有難うございました。さらには2019年度研究報告会にて竹中奨励賞および優秀発表賞を頂きましたこと、心より感謝申し上げます。
 生物には、約一日を単位とする概日時計が備わっています。概日時計の周期は正確に24時間ではなく、そのずれを毎日補正するため、光や食事を時刻シグナルとして利用しています。私は、食事と概日リズムの関係を研究しております。活動時間帯である夜の時間帯のうち、8時間に限り高脂肪食を摂取できる環境にマウスをおいたところ、一日中自由に摂取できるマウスと同量のカロリーを摂取したにもかかわらず、概日時計遺伝子群の発現振幅が改善され、肥満や関連症状等が緩和しました。同じものを同じ量摂取しても、食事時間を一日の一部の時間帯に制限すると肥満にならないため、食べる量や種類ではなく、いつ食べるかを気にするだけで肥満や糖尿病等を防ぐことができます。ヒトに応用できれば負担が少なく肥満を予防できると考え、「時間制限摂食」の分子機構の解明を、今後も引き続き行いたいと考えております。本受賞を励みにして、より一層精進して参りたい所存でございます。また、共同研究者の先生方をはじめ、関わっていただいたすべての方々にこの場を借りて御礼申し上げます。末筆ではございますが、選考委員の先生方ならびにアステラス病態代謝研究会関係者の皆様に感謝申し上げるとともに、貴財団の益々のご発展を心より祈念申し上げます。
優秀発表賞受賞者 木戸屋 浩康
所属機関:大阪大学 微生物病研究所
研究テーマ:腫瘍血管を形成する新規機構「血管内皮滑走」の解析
このたびは伝統あるアステラス病態代謝研究会の研究助成を賜り、また、研究成果に対して優秀発表賞という評価を頂きましたことに感謝申し上げます。
私は癌の根治を実現する新規治療法の開発を目指し、腫瘍組織中の血管を対象とした基礎研究を進めております。生体内で腫瘍組織が増大化していくためには大量の酸素や栄養分の獲得が必須であるため、その供給路である血管を作らせないことで癌を兵糧攻めにするという「腫瘍血管新生抑制療法」の研究がこれまで進められてきました。しかしながら、現状ではこのコンセプトに基づく有効ながん治療法は確立できていません。このような状況を打破するためには、基礎研究に基づく「新たな閃き」が必要となるわけですが、私は生体内イメージング解析という新技術を武器としてこの難問に取り組みました。つまり、生体内の腫瘍組織でどのように血管が作られているかを直接「見る」ことで、腫瘍血管の本質に迫っていったわけです。その研究結果は想定を超えたもので、腫瘍血管を標的とした癌治療概念の根本を覆すものでした。成果発表会には並々ならぬ気持ちで臨み、世界に先駆けて研究内容を発表しましたが、その結果として優秀発表賞という評価を頂けたことは励みになりました。これからも私の全精力を傾けて研究に邁進し、画期的な癌治療法の創出を実現させるものと決意を新たにしております。
最後になりましたが、本研究の遂行に多大な支援を賜りましたアステラス病態代謝研究会関係者の皆様に感謝申し上げるとともに、貴財団の益々のご発展を祈念いたします。
優秀発表賞受賞者 中村 修平
所属機関:大阪大学 高等共創研究院
研究テーマ:生殖と個体生存のバランスを制御する分子機構の解明
この度は第50回研究報告会にて優秀発表賞を頂きましたこと、心より感謝申し上げます。私は生殖と個体生存のバランスがどのように制御されているのかを主に線虫を用いて研究を行なっています。研究を進めるにつれ、このバランスの制御に細胞内分解システムとして知られるオートファジーが重要な役割を持つこと、そしてこのオートファジーを活性化することで動物の寿命や健康寿命の延伸が可能であることがわかってきました。今後オートファジーが何を分解しこのバランス制御に寄与しているのか、見つかっている制御因子の解析を通して明らかにしていきたいと思っています。最後に、研究のご支援と賞を賜りましたことに感謝申し上げますとともに、貴財団の益々のご発展を祈念いたします。


2018年度
最優秀理事長賞受賞者 倉永 英里奈
所属機関:東北大学 大学院生命科学研究科
研究テーマ:生体組織における集団細胞移動の作動原理の解明
 この度は、貴財団の研究助成に採択・ご支援いただいたばかりでなく、数多くの優れた研究発表の中から本研究を最優秀理事長賞にご選出頂きまして、大変光栄に存じております。神戸から仙台に移転して、特に防寒対策のインフラ整備が財政を圧迫している重要な局面で、貴財団から手厚くご支援いただきましたこと、心より感謝致しております。
 今回ご支援いただいた内容は、「集団細胞移動の作動原理」についてですが、そのモデルとしては「ショウジョウバエ雄の生殖器が蛹期に360度回転形成する」というなんとも奇妙な組織形成に注目している研究です。なぜこの「おもしろ生物学」的奇妙な現象に注目したか、少しだけ昔話をさせてください。15年(以上)前、博士課程の学生としてショウジョウバエの形態形成に寄与する細胞死シグナルの解析をしている過程で、変異体の「雄性外生殖器の角度異常症」に出会いました。なぜ角度異常になるのか?80年前にドイツ語で書かれた教科書に「生殖器は回転形成する」とのスケッチがあったので、「角度異常=回転異常」の仮説を証明するために、蛹の殻の尾部を小さく剥いて、2時間おきに一日中写真を撮りつづけました。結果は明確で、実際に「生殖器は360度回転形成していた」ことと、「細胞死シグナル変異体では回転が途中で止まる」ことが鮮明に示され、鳥肌が立つ感覚を覚えました。まさに私自身がライブイメージングの魅力に取り憑かれた瞬間でした。ライブ、からはとうてい遠いタイムインターバル2時間の紙芝居でしたが、その説得力は歴然たるものでした。それからずっとこの現象を追い続け、「回る理由」は「細胞が同心円上を集団移動するから」という結果に辿り着きました。その「集団細胞移動の作動原理」の解明に対して今回ご支援いただき、解明したメカニズムの一つについて報告会ではお話させて頂きました。「おもしろ生物学」的現象を、研究人生の生業として追い続けることには(少し)迷いもありましたが、今回、貴財団からご支援いただき、最優秀理事長賞に選んで頂いたことが今後の研究を発展させて行く上での大きな励み・心の支えとなりました。「おもしろ生物学」だけでは終わらせない知の探求を行っていくという決意を新たに、ますます研究に猛進していきます。最後になりましたが、貴財団関係者の皆さまに心から御礼申し上げますと共に、貴財団の益々のご発展をお祈り申し上げます。
最優秀理事長賞ならびに優秀発表賞受賞者 鈴木 拓児
所属機関:自治医科大学 医学部
研究テーマ:難治性呼吸器疾患に対する次世代細胞治療法の開発
この度は研究支援に加えて最優秀理事長賞ならびに優秀発表賞を賜りまして誠にありがとうございます。大変光栄なこと、とても嬉しく思っております。受賞に恥じない仕事を今後も続けられるように、更なる精進をせねばと身の引き締まる思いであります。
私たちは肺の病態・病気を研究しておりますが、未だに難治性の疾患・謎が数多くあります。臨床家としての視点からできる限り基礎的な病態に迫り、その理解そして診断や治療に貢献できるような研究を目指しております。自然免疫機能として重要なマクロファージは近年その起源や様々な病態への関与が明らかになり注目を集める研究領域になっています。肺胞マクロファージは肺の臓器における感染防御のみならず、炎症・線維化・がん・代謝などに関わる多くの機能があり、とくに臓器特異的な働きとして肺を虚脱から防ぐ肺サーファクタントを処理するという役割があります。肺胞マクロファージの機能異常に伴う疾患のひとつに、肺サーファクタントが肺内に貯留して呼吸不全に至る肺胞蛋白症という稀少疾患があり、私たちはその中でも遺伝性疾患の原因遺伝子の同定や解析研究を行ってまいりました。また興味深いことに肺は体外とつながっており、病態解析や治療という点からは外から介入の可能な数少ない臓器であります。貴研究会の御支援による研究によりまして、稀少疾患の病態およびモデルマウス解析を中心にマクロファージに着目して、こうした肺の特殊性に注目した戦略の成果を発表させていただきました。マクロファージやサーファクタントを中心とした肺の臓器恒常性維持機構の理解とそれにかかわる治療戦略の開発を目的に今後も研究を頑張っていく所存です。末筆ではありますが、選考委員の先生方ならびにアステラス病態代謝研究会の関係者の方々に深く御礼感謝申し上げますとともに、皆様の益々の御発展をお祈り申し上げます。
竹中奨励賞ならびに優秀発表賞受賞者 平田 英周
所属機関:金沢大学 がん進展制御研究所
研究テーマ:脳転移がん細胞の休眠維持・破綻機構の解明
 この度は私どもの研究をご支援頂き、誠にありがとうございました。また優秀発表賞および竹中奨励賞も賜り、身に余る光栄と存じております。
 私は脳神経外科医としても活動しておりますが、脳にできたがんは他の臓器と異なり、手術で治癒することが極めて困難です。人間の本質である脳を傷つけることなく浸潤したがん細胞を取り除くことが難しいからです。現代のがん治療に最も貢献してきた学問は外科学であると私は考えていますが、脳神経外科医としてその限界をも理解した時、脳腫瘍こそ手術以外の治療戦略が必要であると確信致しました。
 本研究提案は脳転移がん細胞の休眠移行と維持、その破綻に関わる分子機構の解明を目標としたものです。脳に転移したがん細胞は休眠状態に移行することがあり、何らかのきっかけで再増殖を開始することが知られていますが、その機構はほとんど分かっていません。私たちはがん脳転移マウスモデルを用いた1細胞トランスクリプトーム解析により、脳転移がん細胞の休眠維持に関わると考えられる複数の分子・シグナル経路を同定することに成功しました。これらのうち、特に脳特異的微小環境によるDNAメチル化酵素・DNMT1の発現抑制とこれに伴う脳転移がん細胞のリプログラミングが、その後の運命決定に重要な役割を担うことを見出しました。これらの研究成果を発展させ、私たちの研究室では現在、中枢神経系特異的な微小環境におけるがん細胞と間質細胞の双方向性エピジェネティクス制御機構とその治療耐性への関わりに着目した研究を展開しています。
 外科的に治癒を得ることができないがん、特に原発性・転移性の悪性脳腫瘍に対する画期的な治療戦略を確立することを目標に、これからも日々精進して参ります。最後になりましたが、アステラス病態代謝研究会の関係者皆様に心より御礼を申し上げますとともに、貴財団の益々のご発展をお祈り申し上げます。
優秀発表賞受賞者 砂川 玄志郎
所属機関:理化学研究所 生命機能科学研究センター
研究テーマ:幹細胞を用いた低代謝誘導物質の検索
このたびは優秀発表賞に選んでいただき大変嬉しく思っております。今日の医療は障害された機能を外部から補うことを目指しています。そのためには高度な医薬品、医療機器が不可欠です。一方で、冬眠の臨床応用は障害された機能でも十分に生命維持できる程度に生体の代謝需要を減らすことが目的であり、冬眠動物のように外部からの助けを借りずに安全に低代謝を維持することができれば、重症患者の搬送、臓器の長期保存、全身麻酔の代替などを通じて、現在は治療が困難な数多くの患者を救うことができると考えております。本テーマでみえてきた哺乳類の細胞レベルの低代謝メカニズムを足がかりに、細胞内でどのような原理で低代謝が生じているのかを解明し、さらに組織や個体というより高次な階層で低代謝を誘導できるように研究を発展させていきます。自然が生み出した究極の省エネである冬眠を人間に実装するための研究はまだ始まったばかりです。一人でも多くの研究者・医療従事者が冬眠に興味を持ち、人工冬眠の研究開発に携わってくださることを願ってやみません。


2017年度
最優秀理事長賞受賞者 椎名伸之
所属機関:自然科学研究機構 岡崎統合バイオサイエンスセンター 基礎生物学研究所 神経細胞生物学研究室
研究テーマ:mRNA輸送と学習記憶・精神神経疾患を繋ぐ分子機構
 この度は我々の研究をご支援いただき、さらに最優秀理事長賞を賜り、大変光栄に存じます。貴研究会ならびに選考委員の先生方に心より御礼申し上げます。本研究申請時には研究室メンバーが増え、新しいテーマにチャレンジしたいが研究費に困っている状況でした。本研究助成と受賞は大変心強く、大きな励みになりました。誠にありがとうございました。
 当研究室では、ニューロンにおけるmRNA輸送と局所的翻訳が高次脳機能に果たす役割を、マウスを用いて研究しています。これまでの研究で、樹状突起へのmRNA輸送に関わるRNG105というタンパク質を発見し、RNG105が長期記憶の形成に必要不可欠であることを明らかにしました。さらに、RNG105が関与する長期記憶形成の基盤メカニズムも明らかになりつつあります。
 RNG105は、mRNA輸送および局所的翻訳を担う「RNA顆粒」と呼ばれる細胞構造の主要構成因子です。RNA顆粒の形成異常は、認知症やALS(筋萎縮性側索硬化症)などの神経疾患の原因になることが明らかにされつつあります。本助成研究では、RNA顆粒が「液相-液相分離」という物理化学的なプロセスで形成され、さらにその内部に固相のコア構造が形成されるのは、どのような分子メカニズムによるのか?そもそも、細胞内の液相・固相をどうやって見分けるか?という課題に取り組みました。この研究は、細胞内における液相・固相構造の形成機構という新しい研究領域へ道を開くとともに、RNA顆粒形成、ひいては長期記憶や神経疾患に対する化合物スクリーニングにも応用可能ではないかと期待しています。
 このようなシーズ(種)の段階の研究に助成を頂くのはなかなか困難ですが、貴研究会ならびに選考委員の先生方の侠気に強く支えていただいたのだと思っています。深く感謝致しますとともに、本研究をさらに発展させられるよう、取り組む所存です。
最優秀理事長賞受賞者 堀 昌平
所属機関:東京大学 大学院薬学系研究科 免疫・微生物学教室
研究テーマ:制御性T細胞による免疫制御機構の解明
この度は、多くの優れた助成研究の中から本研究を最優秀理事長賞に選出いただき、大変光栄に存じます。貴財団から助成金・補助金を頂いたのは今回が2度目になります。いずれも私のキャリアにおいて節目となる重要な時に多大なご支援をいただきました。ちょうど20年前、博士号を取得した後ポルトガル・リスボン郊外にあるInstituto Gulbenkian de Ci?ncia(グルベンキアン科学研究所)へ留学し、その際に貴財団の前身の1つである(財)病態代謝研究会から海外留学補助金をいただきました。留学を機に免疫学に研究分野を変え、当時はまだマイナーな研究領域であった"制御性T細胞 (Treg)"の研究をスタートしました。免疫学での業績が何一つなかった私に対して助成していただいたことにとても驚くと同時に大変嬉しくありがたかったことを今でもはっきり覚えております。そして今回、母校へ戻った年に研究助成金を頂き、財政的に苦しい時期に研究室の立ち上げと研究環境の整備に大いに活用させていただきました。心より感謝いたしております。
私たちはこれまでTregを切り口として免疫系における自己・非自己の識別機構の解明に取り組んで参りました。20年前はマイナーな分野であったTregが、その分化と機能を制御する転写因子Foxp3の発見がきっかけになり大きく発展し、今やヒト疾患の治療へも応用されつつあります。私たちも、微力ではありますが、Tregによる免疫制御メカニズムの理解に少しでも貢献しようと努力して参りました。近年明らかになってきたことは、Tregのはたらきは免疫制御を超え、様々な組織の恒常性維持に必須の役割を担っているということです。最近私たちは、転写因子BATFが組織に局在するTregの分化・機能に必須の役割を担っていることを明らかにしました(Immunity, 2017)。今後、Foxp3とBATFを一つの切り口としてTregによる免疫制御と組織恒常性維持のメカニズムを明らかにし、「自己」とは何か、という問題に迫ってゆきたいと考えております。
この度、最優秀理事長賞をいただけたことは、これから研究を発展させて行く上で大きな励みになります。最後になりましたが、選考委員の先生方ならびに貴財団関係者の皆様に心から御礼申し上げ、貴財団の益々のご発展を祈念いたします。
竹中奨励賞受賞者 浅井禎吾
所属機関:東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 生命環境科学系
研究テーマ:新たな医薬資源を切り開くポストゲノム型天然物探索
 この度は私どもの研究を支援して頂き、また、竹中奨励賞にも選出して頂き、誠にありがとうございました。
 天然物は、20世紀の創薬研究の発展にキープレーヤーとして貢献してきました。新しい天然物が様々な天然資源から次から次へと単離され、それらを中心とした創薬研究が数多く展開されました。しかし、21世紀になると、インパクトのある新規天然物の発見が難しくなり、天然物は創薬の主役の座を追われてしまいました。それでも、医薬シーズ候補分子の創生に関する様々な取り組みがなされた結果、天然物の多様性や三次元的な化学構造の重要性が再認識されるようになってきました。とは言え、従来のような研究を続けていても、新しい天然物の発見は依然として難しいです。近年、天然物探索研究を取り巻く環境も大きく変わってきています。特に、次世代シーケンサーの登場以降、様々な生物のゲノム情報が次々と解読され、未開拓の天然物をコードする未利用な生合成遺伝子クラスターが数多く存在することがわかってきました。また、遺伝子操作技術の発展も目覚ましく、今まさに、これら未利用生合成遺伝子から新しい天然物を創生する新しい天然物探索研究が花開こうとしています。天然物化学研究の中でも、新しい天然物の発見を主に行う研究を「ものとり」といいます。私も「ものとり屋」ですので、創薬研究を発展させるようなインパクトのある新規天然物を世に送り出したいと強く思っています。加速度的に増えるゲノム情報を活用し、ポストゲノム時代の今でこそ獲得し得る新しい天然物の発見を目指して、日々研究に取り組んでいます。私たちの研究を通して、新しい天然物探索研究分野の発展、ひいては天然物創薬の再興に繋がるよう精進致します。末筆となりますが、このような素晴らしいご支援と竹中奨励賞の授与を賜り、選考委員の先生方ならびに貴財団関係者の皆様に心から御礼申し上げます。
優秀発表賞受賞者 岡村大治
所属機関:近畿大学 農学部 バイオサイエンス学科 動物分子遺伝学研究室
研究テーマ:細胞系譜の二元性という幹細胞のシーソーモデル
この度は平成29年度研究報告会にて優秀発表賞を頂きましたこと、大変光栄に存じます。
アステラス病態代謝研究会からの研究助成金に採択頂いた時、私は留学先のアメリカから帰国し、自らの研究の方向性を模索しながら研究環境を立ち上げようと奮闘していた矢先でした。それは金銭的なご支援以上に、私にとっては模索していた研究の方向性に対してもゴーサインを頂いたように感じ、本当に嬉しかったです。私のようなまだ具体的な成果に結びついていない計画に対してもご支援頂ける当研究会からの存在は、孤軍奮闘する若手研究者にとってはこれ以上ない援軍に思えます。
発表会では普段聞く機会がない他分野の先生方の、非常に立派な研究内容をお聞き出来、とても刺激的でした。一方でそこは「成果発表会」ですから、自分の発表順番が近づくにつれ、まだ論文にも至っていない結果を発表することに大きな後ろめたさを感じていましたし、座長の先生に「これしきの成果しか出せてないんですか?」とお叱りの言葉を頂戴するんじゃないかと本気で心配しておりました。しかし実際は短い発表時間だったにも関わらず貴重な質問やコメントを頂き、多くがその後の研究にも生かされております。また上述したように、様々な分野の専門家が集まる発表会においてこのような賞を頂けたことは、少なからず私の研究が一般的な興味になり得るのではないかと期待を抱かせますし、今後この成果を発表する上で大きな励み、そして自信となると思います。このことは自らの研究の成果を「世に問う」作業である論文投稿に際しては、とても重要な要素です。
最後に、ご支援と賞を賜りましたことに心より感謝申し上げるとともに、御財団の益々のご発展を祈念いたします。
優秀発表賞受賞者 斉藤典子
所属機関:がん研究会 がん研究所 がん生物部
研究テーマ:乳がんの再発に関わる核内長鎖非コードRNAの解析
この度は、第48回研究報告会にて優秀発表賞を頂きましたこと、心より感謝申し上げます。発表者の相互投票にてご評価いただいたことは驚きであるとともに大きな励みになりました。本報告会では、研究助成者の先生方が多岐にわたる最先端のご研究の報告をされたり、海外留学の様子を紹介され、私はその緊張感に圧倒されました。研究分野を代表される理事の先生方が活発にご質問される姿に感銘し、学際的な機会を楽しませていただきました。
私は、細胞核と染色体が構築する3次元空間が遺伝子の発現制御にいかに関わるかについて、つまり、高次元のエピジェネティクス研究を進めてまいりました。ヒトゲノム配列の98%程度が、タンパク質をコードしない、いわゆるノンコーディング領域で、その多くから機能未知のRNAが作られていることが近年わかりつつあります。ホルモン依存性に増殖する乳がん細胞が治療抵抗性になるとき、私たちがエレノアと名づけた核内長鎖ノンコーディングRNAが、染色体の高次構造形成に関わることを見出し、その分子メカニズムの解明を行っています。また、乳がんの診断や治療の標的となりうる可能性を追求しています。報告会に臨む際には、本研究の面白さを提案するとともに、研究助成への感謝をお伝えしたいと心にきめておりました。それは、助成のお知らせをいただいたのが、私が熊本大学に務め、熊本地震から半年後の復興半ばにあるときで、その朗報が格別にありがたかったからです。また翌年4月に公益財団法人がん研究会がん研究所に異動し、自身の研究室の立ち上げをした際には、本研究助成に大変お世話になりました。今後この研究を前進させることが恩返しになると考えています。
最後に、アステラス病態代謝研究会関係者の皆様に感謝申し上げるとともに、貴財団の益々のご発展をお祈り申し上げます。
優秀発表賞受賞者 宮成悠介
所属機関:自然科学研究機構 岡崎統合バイオサイエンスセンター 基礎生物学研究所核内ゲノム動態研究部門
研究テーマ:クロマチン高次構造を制御する因子の同定
これまで、公益財団法人アステラス病態代謝研究会の平成28年度研究助成金のサポートにより、クロマチン高次構造を制御する因子のスクリーニングをおこなってきました。これには、近年急速に発展するゲノム編集技術を応用したCRISPRゲノムワイドスクリーニングを用いました。当初、有名ジャーナルに多くのCRISPRスクリーニングの研究結果が報告されており、非常にパワフルなアプローチです。我々にとっては初めてのCRISPRスクリーニングであり、非常にチャレンジングな研究テーマでしたが、スクリーニング結果を見てみると、クロマチン高次構造を制御する未知の因子群を同定することに成功いたしました。現在、同定された因子の機能解析を進めており、毎日一喜一憂しながら研究を進めています。この度、優秀発表者賞をいただき、多くの方々が我々の研究に興味をもってくださっていることを改めて認識することができました。また、このようなチャレンジングな研究テーマにトライする機会を与えてくださった、アステラス病態代謝研究会に感謝いたします。


2016年度
最優秀理事長賞ならびに優秀発表賞受賞者 鈴木一博
所属機関:大阪大学 免疫学フロンティア研究センター 免疫応答ダイナミクス研究室
研究テーマ:交感神経による適応免疫応答の概日リズム制御
この度は最優秀理事長賞ならびに優秀発表賞を賜り大変光栄に存じます。私は2011年に独立した研究室を立ち上げた際に、専門である免疫学に軸足を置きながらも新しい方向性の研究に挑戦したいとの思いから、それまで解明が進んでいなかった神経系による免疫調節のメカニズムを中心テーマの一つに据えました。リンパ球は病原体の侵入に備えるため、リンパ節を中継基地として全身を巡回しています。我々はこれまでに、交感神経の活動性が高まると、リンパ球がリンパ節に引き留められるという現象を発見し、そのメカニズムを明らかにしていました。しかし、この仕組みが免疫応答においてどのような意味を持つのかは不明でした。そこで今回助成いただいた研究では、この問題を解決することを目的としました。
交感神経の活動性には、身体の活動性が高まる時間帯に上昇するという日内変動があります。我々は、交感神経によるリンパ球の動態調節の仕組みが、交感神経の活動性が高まる時間帯にリンパ球をリンパ節に引き留め、より強い免疫応答を引き起こすのに寄与していることを明らかにしました。多くの動物にとって、1日のうちで身体の活動性が高まる時間帯は病原体に遭遇するリスクも高まる時間帯です。そのような時間帯により強い免疫応答を起こす準備ができているということは、感染防御の観点から理にかなっています。したがって、交感神経の活動性に応じて形成される免疫応答の概日リズムは、神経系と免疫系が相互作用しながら進化する過程で編み出された生物の生存戦略の一つなのかも知れません。
ほぼ手探りで始めた我々の研究が、この助成研究を通してはっきりとした輪郭を得たという手ごたえを感じております。このような我々の新しい研究への挑戦をご支援いただいたことに深く感謝いたします。今後も神経系による免疫調節機構の解明を推し進め、生命科学の新領域を開拓したいと思います。
最優秀理事長賞受賞者 竹本(木村)さやか
所属機関:名古屋大学環境医学研究所神経系Ⅰ分野
研究テーマ:カルシウム依存的リン酸化経路による新規情動制御機構
この度は最優秀理事長賞を授与頂き誠にありがとうございました。報告会では多岐にわたる興味深い報告が続きましたので、受賞のお知らせを頂いた際には、大変光栄に思い喜びもひとしおでした。
本研究は、私が大学院生の時に全長を同定したリン酸化酵素について、脳内の特定神経回路における機能を、ウイルスベクターや遺伝子改変動物などを用いて明らかにする課題です。そのために必要な新たな技術として脳内神経活動の可視化技術の確立にも取り組みました。大学院当初には、クローニングやin vitroでのリン酸化アッセイを行い、その後培養神経細胞における研究を推進、そして本課題では脳内特定神経細胞群における機能解明を目指しました。同じ酵素の研究を20年近く続けていることになりますが、研究分野や技術の発展とともに研究の階層も広がり飽きることもなく継続しており、このような研究テーマに初期に出会えたこと、新しい技術を取りいれながら研究を継続することのできる研究環境に恵まれたことは、大変幸運だったと感じます。これもひとえに、ご指導を頂いた先生方、共同研究者の皆様のお陰であり、深く感謝しております。
申請書を提出した2年程前は、名古屋大学での独立が決まり新たな研究室での実験が軌道にのるか、暗中模索の状態でした。この期間に、研究環境を整え、メンバーの頑張りに支えられ、実験面では多くのことができるようになりました。研究室としてこれからが本当の意味でのスタートだと思います。本受賞を励みに、ご支援頂いた課題を一層発展させるとともに、同じように息の長い研究の種を見つけて芽生えさせ、独創性の高い研究へと結実させていきたいと、決意を新たにしております。 末筆となりますが、このような素晴らしいご支援と最優秀理事長賞の授与を賜り、選考委員の先生方ならびに貴財団関係者の皆様に心から御礼申し上げます。
竹中奨励賞受賞者 宮地孝明
所属機関:岡山大学 自然生命科学研究支援センター ゲノム・プロテオーム解析部門
研究テーマ:VNUT特異的阻害剤の開発とその薬学的応用
この度は私の研究をご支援して頂き、また、竹中奨励賞に選出して頂き、厚くお礼申し上げます。私の研究テーマが選ばれましたことを大変光栄に思うとともに、この賞の名に恥じない研究をしなければと身の引き締まる思いです。私はこれまでトランスポーター生化学を基軸に研究に取り組んできました。トランスポーター(輸送体)の普遍的な輸送活性評価法の構築により、ほ乳類の神経伝達物質トランスポーターの輸送機能を複数同定し、その生理的役割を明らかにしました。植物で初めてのビタミンCトランスポーターの同定等にも成功し、この方法は、様々な真核生物のトランスポーターの解析に有効であることを実証しました。
一方で、トランスポーターの新しい生理機能やその創薬標的としての意義が明らかになったにも関わらず、実際に薬ができていないことに、私はもどかしい気持ちがありました。大学で薬学部に入学した動機が、「薬を通じて病気で苦しんでいる人を助けたい」という気持ちであったことも、その理由の一つです。
そこで私は、これまでの応用研究としてトランスポーター創薬を目指し、本研究企画を応募しました。その結果、これまでの基盤技術を発展させ、VNUT阻害剤を同定し、その作用メカニズムを明らかにし、慢性痛、糖尿病、慢性炎症等、複数の疾患に対する有効性を実証することができました。その治療効果は、予想よりもはるかに有効であり、さらに、副作用が小さいことがわかりました。この時、トランスポーターの未知の研究領域の中に、有望な創薬標的がまだまだ残されていることを強く実感しました。
以上の研究成果が基盤となり、日本医療研究開発機構PRIME(脂質領域)に新たな研究プロジェクトが採択されました。今後は、疾患予防という視点を取り入れ、トランスポーターを標的にした機能性脂質代謝物を同定し、その分子メカニズムに基づく医療基盤を構築していきたいと考えています。これからも助成して頂いた研究を大きく育てるべく、日々努力していきたいと思います。
優秀発表賞受賞者 小川美香子
所属機関:北海道大学 大学院薬学研究院 生体分析化学研究室
研究テーマ:がんを特異的に「見る」「操る」システムの構築
この度は、公益財団法人アステラス病態代謝研究会第47回研究報告会にて優秀発表賞をいただき、大変光栄に存じます。発表会では、がんのイメージングと治療を可能とする、新しいメカニズムに基づく薬剤についての発表をさせていただきました。
研究報告会の行われた建物の重厚な雰囲気に飲み込まれつつも、普段聞くことができない様々な分野の先生方のお話を興味深く拝聴しながら自分の出番を待っていたのですが、休憩時間に建物内を徘徊していると、少し前に放送されていた某人気ドラマの撮影に使われていた場所を発見。発表前にも関わらず、ひとりほくそ笑んでしまいました。そして思い返してみると、そのドラマは、夢を持って研究開発に一途に取り組む研究者が、やがて大きなことを成し遂げるというストーリーでした。
昨今、私は研究費のための研究をしているのではないかと、ふと思うことがあります。学位をとって間もないころの純粋な夢や研究の楽しみを、どこかに仕舞いこんでいる気がするのです。特に、新しい研究室を立ち上げたばかりの時期には資金が必要です。そんな折、アステラス病態代謝研究会の研究助成金に採択いただきました。研究の対象や範囲が詳細に定められている研究費が多い中、アステラス病態代謝研究会の応募要領には「領域は特に問いません」と記載されています。また、早急な臨床応用など「出口」がすぐそこに見えていることも要求されません。そこで、夢を持ってじっくり取り組みたいことを研究の対象とし応募しました。そして、本助成金による研究成果は次の大きなステップへの礎となり、現在、さらに発展しつつあります。
まだ件のドラマのような大きな成果には至っていませんが、初心を忘れず楽しく一途に挑戦を続けていきたいと思います。最後に、ご支援と賞を賜りましたことに感謝申し上げますとともに、アステラス病態代謝研究会の益々のご発展を祈念いたします。
優秀発表賞受賞者 渡邉力也
所属機関:東京大学 大学院工学系研究科応用化学専攻
研究テーマ:膜輸送体のための先端計測技術の開発
この度は平成27年度研究報告会にて優秀発表賞を頂きましたこと、大変光栄に存じます。また、諸先生方から頂いた激励の言葉に感謝いたしますとともに、今後も初心を忘れず、研究活動に精進して参りたい所存です。
私は工学部の機械工学科出身で、半導体製造技術に立脚した、マイクロバイオ分析チップの開発を専門としております。近年、半導体製造技術は、LSIなどに代表される電気回路の集積化だけでなく、試験管や流路などのバイオ分析回路を集積化したマイクロチップの製造を実現しております。私どもが専門とするマイクロチップを利用したバイオ分析技術は、従来の生化学分析の感度や効率を大幅に高めるだけでなく、digital PCRなどに代表される革新的な分析装置へと発展しており、新しいバイオ分析の潮流を作りつつあります。この新しい潮流を先導するため、私どもは御財団の支援により、生体膜を高度に集積化した新しいマイクロチップの開発を行いました。当該マイクロチップは、膜タンパク質の機能解析はもちろんのこと、薬物動態の指標となる生体膜透過性の定量解析をも実現する革新技術といえます。今後は当該技術の社会還元を目指すべく、創薬や医療などへの応用展開を行う予定です。
現在、若さあふれるメンバーとともに研究に打ち込んでおります。若さゆえの勢いをもとに、これからも新しいマイクロ分析チップの開発を基盤とし、膜タンパク質の基礎・応用研究を推進して参りたいと思います。最後に、研究のご支援と賞を賜りましたことに感謝申し上げますとともに、御財団の益々のご発展を祈念いたします。


2015年度
最優秀理事長賞ならびに優秀発表賞受賞者 有本博一
所属機関:東北大学 大学院生命科学研究科 分子情報化学分野
研究テーマ:個体の寿命を制御する内因性分子の研究
※財団報ファイル(PDF)が開きます。
最優秀理事長賞受賞者 古屋敷智之
所属機関:神戸大学 大学院医学研究科 薬理学分野
研究テーマ:ストレスにおける神経グリア相互作用の分子実体の解明
※財団報ファイル(PDF)が開きます。
竹中奨励賞受賞賞ならびに優秀発表賞受賞者 宮成悠介
所属機関:岡崎統合バイオサイエンスセンター 核内ゲノム動態研究部門
研究テーマ:核内クロマチン動態を制御する因子の同定
※財団報ファイル(PDF)が開きます。
優秀発表賞受賞者 津田誠
所属機関:九州大学 大学院薬学研究院 ライフイノベーション分野
研究テーマ:ATPによる痒みの神経メカニズムの研究
※財団報ファイル(PDF)が開きます。


2014年度
最優秀理事長賞受賞者 中川勇人
所属機関:東京大学 大学院医学系研究科 消化器内科
研究テーマ:炎症・ストレスによる多重並行ヒットとNASH発癌
※財団報ファイル(PDF)が開きます。
最優秀理事長賞受賞者 西田基宏
所属機関:自然科学研究機構 岡崎統合バイオサイエンスセンター
研究テーマ:活性硫黄を標的とした心血管病予防治療法の開発
※財団報ファイル(PDF)が開きます。
竹中奨励賞受賞者 丸山健太
所属機関:大阪大学 免疫学フロンティア研究センター
研究テーマ:破骨細胞融合阻害活性を持つ液性因子の同定
※財団報ファイル(PDF)が開きます。
優秀発表賞受賞者 高橋弘雄
所属機関:奈良県立医科大学 先端医学研究機構 脳神経システム医科学分野
研究テーマ:嗅覚を用いた脂質代謝異常の治療法の開発
※財団報ファイル(PDF)が開きます。
優秀発表賞受賞者 林悠
所属機関:筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構
研究テーマ:レム睡眠の意義の開明
※財団報ファイル(PDF)が開きます。
優秀発表賞受賞者 松井広
所属機関:東北大学 大学院医学系研究科 新医学領域創生分野
研究テーマ:脳虚血神経障害発生メカニズムの解明と光制御の可能性
※財団報ファイル(PDF)が開きます。


2013年度
最優秀理事長賞受賞者 河村和弘
所属機関:聖マリアンナ医科大学 婦人科
研究テーマ:早発閉経の卵胞活性化に着目した新規不妊治療の開発
※財団報ファイル(PDF)が開きます。
最優秀理事長賞受賞者 久原篤
所属機関:甲南大学 理工学部 生体調節学
研究テーマ:動物の低温耐性の分子生理メカニズム
※財団報ファイル(PDF)が開きます。
最優秀理事長賞受賞者 林久允
所属機関:東京大学 大学院薬学系研究科 分子薬物動態学教室
研究テーマ:小児性肝内胆汁うっ滞症の新規診断法及び治療薬の開発
※財団報ファイル(PDF)が開きます。
竹中奨励賞受賞者 井手上賢
所属機関:熊本大学 大学院自然科学研究科 生命科学講座
研究テーマ:セントロメア由来RNAによる染色体分離制御の解析
※財団報ファイル(PDF)が開きます。


2012年度
最優秀理事長賞受賞者 国嶋崇隆
所属機関:金沢大学 医薬保健研究域薬学系 生物有機化学研究室
研究テーマ:薬物標的となる未知タンパク質の高感度検出法の開発
※財団報ファイル(PDF)が開きます。
最優秀理事長賞受賞者 華山力成
所属機関:大阪大学 免疫学フロンティア研究センター 免疫ネットワーク
研究テーマ:食細胞による死細胞除去のシグナル伝達機構の解明
※財団報ファイル(PDF)が開きます。
竹中奨励賞受賞者 伊原伸治
所属機関:国立遺伝学研究所 構造遺伝学研究センター 多細胞構築研究室
研究テーマ:基底膜の穴のサイズに破綻をきたした変異体の確立
※財団報ファイル(PDF)が開きます。


2011年度
最優秀理事長賞受賞者 河崎洋志
所属機関:東京大学 大学院医学系研究科 神経機能解明ユニット
研究テーマ:感覚神経系を用いた選択的神経回路の形成メカニズム解析
※財団報ファイル(PDF)が開きます。
最優秀理事長賞受賞者 新田剛
所属機関:国立国際医療研究センター研究所 免疫病理研究部
研究テーマ:胸腺皮質上皮細胞の分化メカニズムの理解に基づくT細胞のレパートリー制御
※財団報ファイル(PDF)が開きます。


2010年度
最優秀理事長賞受賞者 石井優
所属機関:大阪大学 免疫学フロンティア研究センター 生体イメージング研究室
研究テーマ:破骨細胞の遊走・位置決めを標的とした新しい骨吸収性疾患治療薬の開発
※財団報ファイル(PDF)が開きます。
最優秀理事長賞受賞者 藤木亮次
所属機関:東京大学 分子細胞生物学研究所 核内情報研究分野
研究テーマ:核内糖修飾による血球細胞分化制御の応用
※財団報ファイル(PDF)が開きます。


2009年度
最優秀理事長賞受賞者 井垣達吏
所属機関:神戸大学 大学院医学研究科 細胞生物学分野
研究テーマ:上皮の内在性癌抑制システムを司る細胞競合機構の解明
※財団報ファイル(PDF)が開きます。
最優秀理事長賞受賞者 西野邦彦
所属機関:大阪大学 産業科学研究所 感染制御学研究分野
研究テーマ:感染時における細菌および宿主防御システム動作原理の解明
※財団報ファイル(PDF)が開きます。


2008年度
最優秀理事長賞受賞者 生沼泉
所属機関:京都大学 大学院生命科学研究科 生体システム学分野
研究テーマ:Rasファミリー G 蛋白質R-Rasによる細胞接着因子受容体の活性化分子機構の解明とがんの浸潤・転移の阻止への応用
※財団報ファイル(PDF)が開きます。
最優秀理事長賞受賞者 近藤久雄
所属機関:九州大学 大学院医学研究院 分子生命科学系部門 細胞工学
研究テーマ:細胞内小器官・小胞体の形成維持の分子機構
※財団報ファイル(PDF)が開きます。
最優秀理事長賞受賞者 酒井寿郎
所属機関:東京大学 先端科学技術研究センター 代謝内分泌システム生物医学分野
研究テーマ:抗肥満効果とケトン体代謝におけるミトコンドリア型アセチル-CoA合成酵素の機能解析
※財団報ファイル(PDF)が開きます。


2007年度
最優秀理事長賞受賞者 池水信二
所属機関:熊本大学 大学院医学薬学研究部 機能分子構造解析学分野
研究テーマ:構造生物学的手法を用いた関節リウマチの坑炎症薬の開発
※財団報ファイル(PDF)が開きます。
最優秀理事長賞受賞者 三浦正幸
所属機関:東京大学 大学院薬学系研究科 遺伝学教室
研究テーマ:カスパーゼ阻害蛋白質IAP分解の可視化とその生理機能
※財団報ファイル(PDF)が開きます。