2014年度

受領者からのメッセージ

2014年度受領者からのメッセージ

2014年度研究助成金受領者(所属は交付時。敬称略・五十音順)

池田真理子
神戸大学大学院 医学研究科 こども急性疾患学

この度は貴財団の研究助成に採択いただき、心より御礼申し上げます。育児、臨床と研究の両立は想像していたよりずっとハードでした。 限られた時間の中で、日々目の前にあることを必死でこなしているうちに、気が付いたらもうそろそろ独立することも考えなければいけない年代になってしまいました。 そのようなあわただしい日々の中で、このような栄誉ある助成金に採択いただきましたことは、研究の幅をさらに広げるチャンスをいただけるだけでなく、大きな励みとなりました。 この研究の成果を医学、社会に還元できるよう、今後とも日々努力してゆきたいとおもいます。

猪子誠人
愛知県がんセンター研究所 腫瘍医化学部

本研究助成は、門戸の広さとアイディア重視の斬新な応募枠で、相当な競争率となっているため、採択の通知には感謝と同時に強い自信がこみ上げてきました。 私は医学部卒業後、月田承一郎・早智子教授夫妻から、形態学を基軸とした分子生物学へお導きをいただきました。 その後、愛知県がんセンター研究所のご理解により「一次線毛の出現が細胞増殖を積極的に止める現象」と分子基盤の発見に至りました(Researchmapご参照)。 この一次線毛を生じるのは大きさ1ミクロンもない中心小体ですが、その小さな構造変化が線毛形成あるいは中心小体複製として、多彩な組織分化や細胞周期進行と相関します。 これは、微細構造ゆえの特異性と大きな現象還元力を両立した効率の良い医学介入対象になるとの発想から、その分子相関の解明を目指しています。 最近のプロテオーム情報や高・超解像顕微鏡技術、分化・再生技術はこれまでにない強い味方といえます。今の私にはナンバーワンの技術も知識もありません。 しかし、自分の眼で顕微鏡下に微細変化を見極め、自由な発想と交流で学際融合に努めることで、オンリーワンの医学的貢献ができるよう精進していきたいと思います。

入子英幸
神戸大学大学院 保健学研究科 国際保健学領域 感染症対策分野

この度は平成26年度研究助成に御採択頂き、心より御礼申し上げます。私は寄生虫学を専門とし、特にマラリア原虫の寄生適応の仕組みに興味をもち研究を行っております。 現所属には、平成26年4月に着任し、独立した研究室を主宰する機会を頂きました。 現在は、研究室に少しずつ機材を設置し、マラリア研究の環境整備を行うとともに、共同利用実験施設などを利用して研究を進めております。 このような研究室の立ち上げ段階でのご支援は、経済面だけではなく、精神的にも大きな励みとなりました。本助成によるご支援を活かし、研究活動に鋭意努力していきたいと考えております。

植田浩史
東北大学大学院 薬学研究科 医薬製造化学分野

この度は、貴財団の研究助成に採択を頂き、大変光栄に存じます。また、先の東日本大震災時には、緊急助成金を頂き、誠にありがとうございました。 貴財団の迅速かつ温かい御支援のおかげで、再スタートの第一歩をスムーズに踏み出すことができ、今回の申請に繋がったものと感謝しています。 私は、複雑な骨格を有する天然物合成を基盤とする有機合成化学を専門としております。 この独自の強みを活かし、企業や生物学者とは異なる新たな切り口でエピジェネティクス研究領域を切り拓くことができるのではないかと考え、本研究を提案させて頂きました。 また本研究では、貴財団の助成金を最大限活用させて頂き、エピゲノム創薬の発展のみならず、工業プロセスにおける日本発の革新的な方法論の開発も目指していく所存です。

植松 智
東京大学 医科学研究所 国際粘膜ワクチン開発研究センター 自然免疫制御分野

この度は平成26年度助成金に採択していただきまして、大変感謝申し上げます。 研究室を立ち上げて日の浅いことから、この助成は研究室の整備、運営のために大変助かりますし、とても励みになりました。 研究室を立ち上げ後、放射線の腸管障害における自然免疫の役割に関して重点的に研究を行ってまいりました。 本申請課題では、これまでの急性放射線腸障害に関する研究を発展させ、難治性の慢性放射線腸障害の病態機構を解明しようと思っております。 頂いた助成金を十二分に活用させていただき、素晴らしい成果を上げられるよう頑張っていく所存です。 今後、免疫疾患、感染症における新規の予防法、治療法の開発を目指して日々精進していきたいと思います。

牛込恵美
京都府立医科大学大学院 医学研究科 内分泌代謝内科学

この度は栄誉ある貴財団より、平成26年度の研究助成を賜りまして、心より御礼申し上げます。 2008年度より、糖尿病合併症の進行予防を目標として、糖尿病患者に特化した家庭血圧の大規模コホート研究を開始いたしました。 2010年度以降、本研究から家庭血圧を指標とした血圧管理と糖尿病合併症の関連について、多くの先駆的な有用知見を世界に向けて発信しております。 高血圧の分野において近年最も注目を集めている"家庭血圧"と、社会的最重要課題である"糖尿病合併症"との関連を検討する本研究は非常に重要であり、今後も新規的知見を日本から発信すべく、更なる発展(特に前向き、介入研究)が必要と考えております。 採択通知を拝受いたしました際の喜びと身の引き締まる思いを大切に、今後も責任と熱意を持って本研究に尽力して参ります。

浦田秀造
長崎大学 熱帯医学研究所 新興感染症学分野

この度は、貴財団の研究助成金に採用していただき、大変光栄に思っております。 今回採用していただいた研究テーマは、エボラウイルスの粒子産生において中心的な役割を果たすVP40タンパク質の立体構造情報を基に、新規抗エボラウイルス化合物を探索・同定するというものです。 現在日本には感染性エボラウイルスを使用できる (Bio Safety Level) BSL-4施設がないことから、本研究の遂行のためには海外のBSL-4施設を利用しなければなりません。 本助成金をBSL-4施設での研究費として有効に活用することで、最終的に人類の健康・平和に貢献できればと考えています。 今回の採用を励みに、今後もより一層頑張りたいと考えております。

浦野友彦
東京大学医学部附属病院 老年病科

今回は栄誉ある貴財団の研究助成に研究計画(ロコモティブ症候群における新規診断法の開発)を採択いただき、心より感謝申し上げます。 私は老年病科の外来ならびに病棟において高齢者のADLならびにQOLを維持できるよう医療を行っております。 高齢者のADL低下に伴い介護が必要となる原因において骨・関節・筋肉といった運動器の機能低下は重要な問題となっております。 基礎的なアプローチと臨床研究を融合させて、骨粗鬆症やサルコペニアといった疾患における病態を詳細に理解し、そこから新たな診断マーカーや治療標的を見つけていきたいと考えております。 本研究助成を活用し、自分自身のライフワークである老年病の分子機構を明らかにしていくことで、多くの患者様にフィードバックできる研究へつなげていきたいと考えています。

太田訓正
熊本大学大学院 生命科学研究部 神経分化学分野

栄誉ある貴財団の研究助成に採択いただき、深く感謝申し上げます。私たちは、乳酸菌をヒト皮膚細胞に取り込ませると、細胞塊を形成し、多能性を獲得するという現象を見出しました。 発表当初は、ほとんどの研究者に信じてもらえず、「眉唾物だ」「偶偶だろ」との批判を受けました。 また、本研究助成の申請時には、日本の生命科学研究に強烈な逆風が吹いており、研究内容も類似していたことから、今後の研究費獲得は至難の業であろうと、半ば諦めておりました。 多くの研究課題の中から、私たちの研究課題に「新たな展開が期待できる」と評価していただき、身の引き締まる思いです。 今後は、貴財団の名に恥じぬよう本研究を推進していく所存です。

小川正晃
自然科学研究機構 生理学研究所 発達生理学研究系 認知行動発達機構研究部門

この度は平成26年度の貴財団の研究助成金に採択していただき、深く感謝申し上げます。私は、アメリカでの5年間のポスドク生活を経験後に、最近帰国いたしました。 その経験を基に研究のアイデアはあるものの、残念ながらそれを実現するための研究資金に乏しい状況にありました。 そんな中、本研究提案を選考委員の先生方にご支持いただき、大変大きな励みになりました。私は、げっ歯類の報酬学習をモデルシステムとして、その神経回路メカニズムの基礎研究を行いたいと考えております。 その結果、本研究助成の趣旨にあるように、何らかの形でヒト精神疾患の病態理解、治療に貢献することができれば本望です。 本助成にふさわしい研究を展開していくことができるよう努力して参りますので、これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。

小坂田文隆
名古屋大学大学院 創薬科学研究科 細胞薬効解析学分野

この度は貴財団の平成26年度研究助成金に採択下さり、心より感謝申し上げます。 私は神経細胞死の研究からスタートし、視覚分野の再生医療研究、そして神経回路研究と螺旋状に成果を積み上げて参りました。 脳や網膜などの神経科学分野における革新的技術の開発、情報処理機構の解明、損傷した神経回路の修復など、基礎・応用両分野で貢献すると同時に、 新しい分野を開拓することを目標に研究を行っています。昨年米国留学を終え、現在は新しいラボのセットアップに奔走しています。 このタイミングでの貴財団からのご支援は大変ありがたく、真理の探究と医学・薬学分野への貢献を目指し、これからも日々精進して参る所存です。

笠木伸平
神戸大学医学部付属病院 臨床検査医学分野

この度は貴財団の研究助成金に採択いただき、大変感謝しております。助成金をいただけることが決まる前は留学から戻ったばかりで、アイデアとやる気があっても研究費が十分になく研究が進まないという一番ピンチな状況にありました。 そういった状況にいた私に救いの手を差し伸べていただいたことは、研究ができるメリットのみならず、研究提案が採択されたこと自体もまた、大変大きな研究の励みとなりました。 現時点ではようやく自分の研究基盤ができつつあり、これからどこまで今の研究が広がりを見せるかはまだ分かりません。 自分の研究がどこまで、またどの方向に発展するのか、可能性、発展性を色々と試せるのも今が一番いい時期だと思っていますので、そういった時期にいただける研究助成金というのは、私にとって大変重要な意義があります。 今後とも真摯に研究に勤め、いつかは患者さんの明日を照らせるような研究に発展させることができればと願います。

片山義雄
神戸大学医学部附属病院 血液内科

この度は貴財団の平成26年度助成金に採択いただき、大変うれしく思いますとともに、深く感謝申し上げます。 血液内科臨床で携わる各種疾患において、実際にその病態が深く解析された上で臨床医がその知見を頭に思い描きながら診療が行われることは、実は非常に希であると私は考えています。 経験的に決められた診断手順とガイドラインに従った治療は一定の診療レベルを担保するには有用ですが、その疾患の本質を主治医がイメージできていなければ、個々の症例からの新たな発見を望める確率は低くなります。 今回の研究対象である骨髄増殖性腫瘍は、単一の遺伝子異常がクローズアップされていながら、実際に骨髄の中で起こっている現象が単一ではないことを捉えた私達の研究室独自の知見を発展させるものです。 主治医による病態の真の理解が実臨床の質を向上させることにつながることを信じて、血液内科医である大学院生達と基礎研究を推進して参ります。 今回の研究助成は、次世代の血液内科医の育成に大きく寄与するものと確信しています。改めて貴財団に感謝申し上げます。

小出隆規
早稲田大学 先進理工学部 生物分子化学研究室

大学の研究者は、「おもろいもん」とか「すごいもん」を見つけたり作ったりするために、昼夜を問わずわけのわからんことをする人種であったはずである。 しかし、昨今では、「出口を明確にせよ」というお上のお達しが浸透し、彼らは本来の性質をひた隠して、企業のプロジェクト提案のような申請書を書くようになった。 採択されれば、「おお、あたった!」と喜ぶのもつかの間、「ああ、中間報告で落とされんように、予想された結果をださんとアカン」と、胃が痛くなる。 この症状にはガスターが有効であるが、それを予防するためには、財団から資金援助をいただくことである。細部に縛られず変態度全開で、「うまくいったらおもろいで」と、のびのび研究ができる。これはうれしい。 日本には、トップダウンによる規定路線からはみ出した変態有望研究者はまだたくさんいるはず。ぜひWelcome Trustを凌ぐような助成財団になって頂けますことを。

小松紀子
東京大学大学院 医学系研究科 免疫学

この度は、貴財団の研究助成に採択頂き、心より感謝申し上げます。伝統と栄誉ある貴財団に採択されたことは大変光栄でありまして、 大きな励みとなるとともに身の引き締まる思いを致しております。関節リウマチなどの自己免疫疾患がなぜ発症するかはまだ未解明な部分が多く、根本的な治療法は確立されておりません。 自己寛容の維持とその破綻のメカニズムの理解を通じて、将来的に疾患の治療に繋がる研究を展開できればと思っております。 本研究助成のサポートを最大限有効に活用させて頂き、多くの人々と感動を共有できるような研究を目指して精進して参りたいと思います。

柴 祐司
信州大学医学部附属病院 循環器内科/信州大学バイオメディカル研究所

この度は、アステラス病態代謝研究会の研究助成金に採択頂き大変ありがとうございました。私の研究室では、心臓病に対するiPS細胞を用いた再生医療を実現するために、 霊長類間の同種移植の検討を行っています。研究を進めるに当たり、研究資金の獲得は最も重要な課題の一つであり、本研究助成は大変ありがたいと感じております。 一つの研究テーマを続けていると、自分の研究が正しい方向に向かっているかどうかを悩むこともあります。様々な研究背景を持つ国内の一流の研究者からなる選考委員の先生方から、 自分の研究が評価され、示唆に富む具体的なコメントを頂き、今後の励みとなりました。今後、研究成果を論文としてまとめ、医学の進歩に貢献できるよう努力を続けていく所存です。 この度は大変ありがとうございました。

鈴木 亮
名古屋市立大学大学院 薬学研究科 生体超分子システム解析学

この度は、伝統と栄誉ある貴財団の研究助成に御採択を頂きましたことを、心より感謝申し上げます。8年間の海外での研究活動を終え、帰国後全く新しい環境でプロジェクトを立ち上げ、 遂行するためには、まず経済的な面が大きな障壁になると思います。そのような意味において貴財団が掲げる「留学から戻ったばかりの研究者」を支援するという理念は、 私にとって非常に心強く、迷わず応募した次第です。また、今回私が提案した研究テーマを数多くの中から御採択を頂いたことによって、経済的な面だけではなく、 精神的な面においても大きな励みになりました。現在は、これまで得た知見をさらに展開させるため、細胞間相互作用に焦点を当てたアレルギー発症の分子機構の解明に日々奮闘しております。 今後もアステラス病態代謝研究会研究助成金受賞者の名に恥じぬような研究を行っていきたいと考えております。

宗 孝紀
東北大学大学院 医学系研究科 免疫学分野

この度は、貴財団より平成26年度研究助成金を賜り大変感謝致しております。 私は、末梢CD4+ T細胞(ヘルパーT細胞)の分化機序やこの細胞群による免疫制御機構の解明を目指しこれまで研究して参りました。 最近、私の中で長年懸案事項であったT細胞炎症に関する新しい分子機構を明らかにすることができました。 この成果を独創的かつチャレンジングな形で発展させることはできないかと日々模索しております。今回、提案させて頂きました研究課題が貴財団で採択され、大変励みになっております。 本研究から新規の分子機構を特定し、これを疾患の病態発現メカニズムの解明や治療法の開発に役立てることができるように日々精進する所存です。 重ねまして、貴重な研究費を頂き貴財団に感謝致しますとともに、今後ともより幅広く多くの研究者や教育者の支えになって頂けるよう切にお願い申し上げます。

千葉奈津子
東北大学 加齢医学研究所 腫瘍生物学分野

この度は、貴財団の平成26年度研究助成金にご採択頂き、誠にありがとうございます。 私は以前より、その生殖細胞系列変異が遺伝性乳がん・卵巣がん症候群の原因となるBRCA1機能解析を行っております。 最近、その新規結合分子としてOLA1を同定し、その細胞分裂における機能破綻による発がんメカニズムに関する解析を行っています。 平成26年度4月より研究室を持たせて頂いたばかりですので、大変厳しい時期に選考委員の先生方に評価して頂き、本研究助成に採択されたことは、私にとりまして大変大きな助けになり、 さらに精神的な励みにもなりました。がんの基礎研究を実際の臨床に役立てるためには、臨床のニーズを理解した上で、新しい発想をすることが大切だと思っています。 今後は、新しいがんの予防法・診断法・治療法の開発をめざして、さらに研究に邁進して行きたいと思います。

中台(鹿毛) 枝里子
大阪市立大学 複合先端研究機構

このたびは貴財団の研究助成に採択して頂きましたこと、心より感謝申し上げます。私は平成25年に第1子の出産、平成26年にテニュアトラック教員として研究室の主宰を始めたばかりの、母としてもPIとしても初心者であります。 このような不安定な状況におきまして、貴財団の助成趣旨にあります「女性研究者」「研究室を立ち上げたばかりの研究者」を応援したいという言葉は大変心強く感じられ、 助成が決定する前から勝手に励まされておりました。今後は、助成金を有効に使わせて頂き、浸透圧ストレス応答におけるグリア細胞機能の解明という研究課題に取り組んで参りたいと考えております。

中村肇伸
長浜バイオ大学 バイオサイエンス学部 エピジェネティック制御学研究室

この度は、貴財団の研究助成金に採択していただき、心より感謝いたします。私は、3年前に研究室を立ち上げ、マウスの着床前胚で特異的に発現している遺伝子群の機能解析を始めました。 独立後に始めた研究テーマが、競争の激しい選考過程で評価され、伝統ある貴財団の研究助成採択されたことは、大きな励みとなりました。 本研究助成金は、基礎から臨床までを対象とし、推薦や年齢制限がなく、純粋に研究の独創性や先駆性が評価される数少ない制度だと感じております。 今後とも、貴財団の素晴らしい趣旨を守り続け、多くの研究者をご支援いただけますよう、お願いいたします。

西山功一
熊本大学医学部附属病院 循環器予防医学先端医療寄附講座/熊本大学国際先端医学研究拠点

この度は、貴財団の平成26年度研究助成に採択頂き大変光栄に存じます。また、本年度より現職に異動し新しく研究室を立ち上げた状況であるため、 様々な面において勇気や希望を頂きましたこと感謝の念に堪えません。私は、循環器領域で長らく臨床に携わった後、本格的な基礎研究領域に脚を踏み入れました。 血管を新生(再生)させ虚血性疾患を直したいという動機から始まった私の研究生活ですが、現在では、 どのように個々の細胞の自律的ふるまいから秩序ある多細胞体(組織)が構築されるのかという問いに、その表現型が変わってきています。 つまり、血管新生を一つの解析モデルとして捉え、応用数学や工学などの異分野の力を借りて学際的にその問いにアプローチしています。 この研究助成に採択されたことを契機に、純粋な科学的探究心は保ちながらも、私の研究の原点でもある医療現場へ直接的に貢献する研究をも発展させていけるよう今後も努力を惜しまない所存です。

畠山 淳
熊本大学 発生医学研究所 脳発生分野

生命の誕生・形成に魅せられて、大学院生のときから一貫して発生の神秘の謎を解くことに夢中になってきました。 近年、貴重な出会いがあり、最も興味があった霊長類の発生を研究できる機会に恵まれました。我々の脳はどのようにして進化してきたのか、どうやって大きな脳を獲得したのか。 その謎を知りたく、独自の観点で仮説をたて、その検証に楽しみながらも奮闘しています。 まだスタートラインに立ったばかりのプロジェクトにも関わらず、御財団の助成により円滑に研究を進められる状況に、大変感謝しております。 この時期は、検討する項目や仮説も多く、助成の有り難さが身に染みております。独創性や先駆性を大事にして、興味深く将来の発展性を感じられる研究成果で、御財団の期待に応え、 基礎生命科学に貢献していきたいと思っております。

深田優子
自然科学研究機構 生理学研究所 細胞器官研究系 生体膜研究部門

この度は、アステラス病態代謝研究会の研究助成に採択いただき、選考委員会、評議員、理事、学術委員の諸先生方、ご関係の皆様に心より感謝申し上げます。 私はシナプス伝達関連分子を標的とする自己抗体による脳機能障害の病態解明と診断・治療法の開発を目指します。 基礎科学研究者の立場ではありますが、臨床医学との橋渡し研究となる成果となるよう、そして私どもの萌芽的な研究に対するアステラス病態代謝研究会の勇気あるご支援にお応えできるよう、 がんばって参りたいと思っております。

古屋敷智之
神戸大学大学院 医学研究科 薬理学分野

このたびは貴財団の研究助成金に採択いただき、心より御礼申し上げます。私は平成26年5月に現職に異動となり、初めて独立した研究室を主宰する機会をいただきました。 専門は中枢神経薬理学で、精神疾患創薬を目指し、社会的なストレスによる認知や情動の変化のメカニズムを探求しています。 独立前に溜め込んだ未発表データを元に勝負しよう、という意気込みとは裏腹に、研究の継続に必要な設備は整っておらず、これまでの研究など継続できるのか、という不安との闘いでした。 本研究助成金をもとにセットアップを次第に整えて、今では赴任前に描いた夢が現実に思えるようになっています。 貴財団の研究助成金は、独立したての私にとって、新たな挑戦への物心両面での大きなご支援となっています。 厳しい競争倍率の中でご採択いただけたことは本当に身に余る光栄ですが、同時に、大きな責務を背負ったとも感じております。 本研究助成金の名に恥じないよう、前人未到の問題への挑戦心を忘れず、世界の医学生物学研究に貢献できる研究者を目指して最善を尽くす所存です。

星野幹雄
国立精神神経医療研究センター 神経研究所 病態生化学研究部

このたびは、貴財団の助成金に採択して頂きまして、深謝致します。私は大学院時代から一貫して脳神経系発達の分子機構を研究してきました。 しかしこれからは、その脳神経系の発達機構の破綻によって引き起こされる精神疾患の病理についても研究していこうと考えて、研究課題を提案させて頂きました。 一般的に新たな分野に挑戦しよういう場合、その分野での今までの実績に乏しいものですから、なかなか研究費を獲得しにくいものです。 そんな中で貴財団の助成金に採択して頂いたことは、本当に有り難く、より一層精神疾患の研究を進めて行こうと勇気づけられました。 今後は、本助成金に採択されたことに相応しい優れた研究成果を挙げるべく、日々努力していきたいと考えています。最後になりましたが、貴財団のますますの発展をお祈り申し上げます。

丸山貴司
岐阜大学大学院 医学系研究科

この度は、本研究課題に対しまして、研究助成を賜りました事、心より御礼申し上げます。私は一昨年度より、牟田達史先生の研究を引き継ぐと共に、独自の研究を発展させるべく、 文科省のテニュアトラック事業に採択されております岐阜大学・医学部に赴任いたしました。本研究課題では、慢性炎症を制御する新たな分子に着目し、生体内における機能解析を行うと共に、 新しい分子の発現を抑える化合物スクリーニングを行い創薬に結び付けたいと考えております。挑戦的な要素を含んでいる研究ですが、評価して頂いたことに深く感謝しております。 今後も、貴財団の発展と共に、ますます多くの若手研究者への助成が増える事を願っております。

村上智彦
大阪大学大学院 歯学研究科 生化学教室

はじめに、貴財団の研究助成に採択いただき、心より御礼申し上げます。現在、私は留学から帰国し、留学先で勉強してきました炎症に関する研究テーマを発展させるため、実験システムを一から立ち上げております。 そのために、帰国した瞬間から新たな研究費が必要なのですが、時期や制度上の要素を含め、帰国直後から研究費を獲得することは極めて厳しいのが実情です。 その中で、貴財団の研究助成は帰国直後の研究者支援を積極的にされていることを知り、今回応募させていただきました。 光栄ながらこの度採択され、留学から帰国したばかりで研究費が少ない中、非常に励みになっております。このすばらしいチャンスを活かして、今後も精進して参りたいと思います。

谷内江 望
東京大学 先端科学技術研究センター 合成生物学分野

この度は栄誉ある貴財団の助成金に採択頂きましてありがとうございます。 私たちの研究室では計算機科学と合成生物学を横断的に組み合わせて生命科学における新しいテクノロジー開発を精力的に行っております。 ガンをはじめとしたヒトの疾病は単一の遺伝子や単純なパスウェイの欠損が原因となることは少なく、細胞内で複雑に絡み合った分子ネットワークの故障を理解することが重要です。 一方で生理的な分子ネットワークの高速かつ網羅的な計測はまだ難しく、新しいテクノロジーの登場が待たれます。 本研究では、DNAバーコード技術、次世代シーケンサーを組み合わせてヒト細胞における生理的なタンパク質間相互作用を高速にスクリーニングできる技術の確立を目指します。 貴財団の採択者として相応しい若手の独立研究者として精力的に研究を進め、研究室の仲間と良いサイエンスを多く創出していきます。

渡辺 匠
微生物化学研究会 微生物化学研究所 有機合成研究部

この度は貴財団より研究助成を賜り、心より感謝申し上げます。本課題では天然物が示す生物活性の新規性と有機合成による多様な化合物の創出力を両輪とした研究展開を目指しており、 アカデミア創薬による「正常細胞を標的とした抗がん剤」の開発をゴールにおいています。 がん細胞の増殖・悪性化・転移を制御する働きを持つ正常細胞由来の分泌因子等に分子標的を見出し、これに作用する天然物を優れた医薬候補化合物に磨き上げていく研究です。 このアプローチから得られた化合物はがん細胞と比較した正常細胞の遺伝子安定性に鑑み、より耐性発現頻度の低い抗がん剤となることが期待されます。 高い目標ではありますが、本助成受領者の名に恥じぬよう精励して参ります。



2014年度海外留学補助金受領者(所属は交付時。敬称略・五十音順)

井原涼子
東京大学大学院 医学系研究科 脳神経医学専攻 神経内科学
留学先:Washington University in St. Louis, St. Louis, Missouri, U.S.A.

この度は、栄誉ある貴財団の海外留学補助金に採択いただきましたことを心から御礼申し上げます。 私は博士課程では疾患基礎研究に取り組みましたが、この3年間は診療経験を活かし、 認知症を始めとした神経変性疾患の臨床研究の立案や遂行のための基盤整備に従事してきました。 基礎研究領域では世界に後れを取らない日本ですが、臨床研究領域では多くの点でまだまだ欧米に追い付かないことを痛感してきました。 国民性や医療制度の異なる日本で、欧米の追従だけではなく独自性を持ったコホート研究を遂行するにはどうすればよいかということが大きな課題です。 世界トップクラスのアルツハイマー病研究センターにて、超早期アルツハイマー病を対象とした臨床研究プロジェクトへの参加を介して標準的手法を多方面から学び、 それらを日本に適用する工夫や新たな研究アイデアを練り、帰国後の研究に活かしたいと思います。 実りある留学生活になるよう、研究に邁進して参ります。

國本博義
慶應義塾大学 医学部医学科 血液内科
留学先:Memorial Sloan Kettering Cancer Center, New York, NY, U.S.A.

この度は、貴財団の海外留学補助金を賜り、心より御礼申し上げます。 私は血液内科の臨床医として 、多くの血液がん患者さんが現行の抗がん剤治療に奏功せず命を落とす現状をみて参りました。 そのような経験から、患者さんが臨床現場で直面する治療法の限界という根本的問題に対して、基礎研究を通じて現状を克服し得る新たな治療法の開発に挑戦し、 血液がん患者さんに還元していくことが自らの使命であり、目指すべき医師・研究者像であると考えるに至りました。 留学先のLevine博士研究室は、 実際の患者病態の観察に基づいた仮説に立脚して分子病態の解明、新たな治療法の開発を目指す、世界トップクラスの研究室です。 そのような留学先研究室の研究内容・理念・姿勢に共感を覚え、留学を決意しました。 留学先では、日本で培ってきた白血病・幹細胞研究の知識と技術、そして血液臨床医としての情熱をもって研究に専念し、 血液がん患者さんにとって希望となるような仕事ができるよう努力して参りたいと存じます。

春原光宏
東京大学医学部附属病院 呼吸器内科
留学先:University of Southern California, Los Angeles, California, U.S.A.

この度は、貴財団の海外留学補助金に採択して頂きまして大変光栄に存じます。 私の研究を採択して下さいました先生方、関係者の皆様、またメールでの質問に非常に丁寧に回答して頂きました事務局の先生にこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。 留学当初は他の研究員の実験の手伝いを通じて研究室で培われた技術や手法を学ばせていただき、現在はヒト献体からの肺胞上皮細胞の細胞種別の単離という新たな技術の開発も主導的に行わせていただいております。 間質性肺炎患者の献体に対してこの技術を応用することで、ヒト間質性肺炎の病態を解明し、今後のびまん性肺疾患研究の発展に微力ながら資することができればと考えております。 今後とも、貴財団に関係する皆様方から応援されているという気概をもって研究をすすめていくとともに、帰国後の研究発展に活かせるよう頑張ってまいります。

住田(今井) 光穂
仙塩病院
留学先:University of California, San Francisco, California, U.S.A.

非常に多くの応募者の中から採用していただき、心より感謝しております。 研究留学をしたいという私の夢に御賛助いただけることを知り、明日への扉が開かれるような思いと共に、改めて身の引き締まる思いを感じています。 現在の診断や治療では癌等の病気の進行を止めることができず、臨床医として患者さんの苦悩を目の当たりにする中で、自分に何か微力を尽くすことはできないか。 その思いから、癌の発生や進展に関する研究をしてきました。抗癌剤の開発は、がん細胞に特徴的な分子機構が解明される等のがん研究の発展が基盤となっています。 そのため、効果的な治療に繋がる基礎研究をしている研究室で多くを学び取り、少しでも社会に貢献できるように、邁進していきたいと考えています。 育児をしつつ研究留学することに対して不安もありますが、充実した生活を楽しみたいと思っています。 最後に、このような機会が得ることができたのは、私を応援してくださる恩師や家族、何より、貴財団のおかげであると深く感謝しております。

多田 智
大阪大学 微生物病研究所 分子免疫制御分野
留学先:French Institute of Health and Medical Research (U986), Paris, FRANCE

この度は、アステラス病態代謝研究会海外留学補助金を助成いただき大変光栄に存じます。 私に研究の場を与えていくださいました大阪大学微生物病研究所菊谷仁教授、大阪大学神経内科望月秀樹教授をはじめ、選考委員の先生方、事務局の方々に厚く御礼申し上げます。 2014年の夏は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)という私の研究テーマである疾患がアイスバケツチャレンジという形で有名になりましたが、 私は留学先のフランスで、この難治性致死性神経変性疾患であるALSに対する免疫学的治療法確立のための基礎研究を行う予定です。 本助成で頂いた貴重な機会を活かし、留学先で新技術の習熟に努めると同時に、本研究がヒトALS治療の足がかりになれば嬉しく思います。

塚原達也
東京大学大学院 理学系研究科 生物科学専攻
留学先:Harvard University Medical School, Boston, Massachusetts, U.S.A.

この度は貴財団の海外留学補助金に採択いただき、誠にありがとうございます。 私はこの留学を契機に神経科学分野へと研究内容を大きく転換しましたが、そのような新たな挑戦を評価していただいたことに深く感謝しております。 留学先では、動物が学習によって行動を変化させる際に感覚情報とその情報の「価値」をどのように統合しているのかについて、マウスの嗅覚系をモデルに解析する予定です。 学習による行動調節は動物が刻々と変化する環境に適応する上で極めて重要であり、今回の研究でそのメカニズムに迫ることが出来るよう努力する所存です。 今後ともどうぞ宜しくお願い致します。

恒松雄太
静岡県立大学 薬学部 生薬学分野
留学先:Leibniz Institute for Natural Product Research and Infection Biology, Jena, GERMANY

この度は海外留学助成に採択して頂きまして誠に有難うございました。私は学位取得後、静岡県立大学にて三年間のポスドク生活を経て2014年8月に助教へと採用され、 周りの先生方のご理解のもと同年9月より同職を休職し、ドイツ、Jena市にて研修留学をさせて頂いております。 学生時代から抱き続けていた海外留学という夢を現実に出来る喜びがあった反面、経済的な不安もありましたが、「とにかく飛び込んでみよう」と勢いに任せて出国したことを覚えています。 留学当初は研究環境や言語、食事等の生活環境に馴染めず苦難を感じることも多かったのですが、 そのような折、貴財団からの留学助成採択の通知を受けたことが現在の充実した研究生活の支えとなっております。 留学にしても助成申請にしても、やはりチャレンジしてみるものだ、と身にしみて感じております。 このような貴重な経験をさせて頂いた貴研究財団に重ねて御礼申し上げると共に、少しでも本メッセージが本留学助成申請に挑戦される研究者の手助けとなれば幸いです。

中島江梨香
中部大学 工学研究科 機械工学専攻
留学先:The University of Chicago, Chicago, Illinois, U.S.A.

この度は、貴財団の海外留学補助金に採択いただき、誠にありがとうございます。 私は、工学出身で、化学の分野で現在の研究を開始するときは未知の世界へ突入するようで興奮と不安な気持ちが混在しておりました。 その後すぐに貴財団の海外留学補助金に申請し、米国シカゴ大学の有機化学の研究室に移りました。 異分野、異国の地で悪戦苦闘している最中に、選考委員様からの暖かいコメントと共に補助金採択のご連絡を頂き、日本から頑張れと後押しされているようで、大変心強く思いました。 大変感謝しております。今では、世界中から集まる素晴らしい研究者と共に研究できることの喜びと、 日本では決して体験することのできない様々な出来事に日々刺激され自分の成長を常に感じております。 これからも化学技術の発展に貢献できるよう、自分の独創性を活かし、化学と工学を融合させたマイクロフローリアクターを用いた有機合成システムの開発に精進してまいります。

光石陽一郎
東北大学大学院 医学系研究科 呼吸器内科学分野
留学先:Dana-Farber Cancer Institute, Broad Institute, Boston, Massachusetts, U.S.A.

このたびは貴財団の海外留学補助金を賜り、誠にありがとうございます。昨年9月よりDana-Farber Cancer InstituteのMatthew Meyerson Labに所属しBroad Instituteにて研究を始めました。 市中病院で初期後期研修を終えた後に大学院での研究を開始した自分にとって、留学を考え始めた際に、「推薦者不要」「年齢制限なし」と門戸を広げ、 さらに過去の業績だけでなく留学中の研究計画や将来のビジョンを評価して頂けるこの留学補助金制度は非常に魅力的でした。 留学中はゲノム情報をどのように臨床に還元していくか、肺癌の疾患感受性の研究を通して思索しようと考えています。 同時にハイスループットスクリーニングを利用した創薬プロジェクトに関わることになり、これらの研究を臨床医の視点から進めていくことで、これまでの知見をより深めていけるよう精進していきます。

森川洋匡
大阪大学 免疫学フロンティア研究センター 実験免疫学
留学先:Karolinska Institutet & Karolinska University Hospital, Stockholm, SWEDEN

この度は、貴財団の海外留学補助金に採択していただきまして本当にありがとうございました。 長い病院勤務の後、博士課程より研究を始めましたので、年齢によって応募できる留学助成金が限られていたため、補助していただくことができ本当に助かりました。 留学先のカロリンスカ研究所では、日本で研究していた免疫細胞に対して、1細胞解析を含めた様々な解析方法を適応する中で、その高解像度多次元データに対して情報を維持しつつ、 いかに理解可能な次元に変換できるかということについて研究する予定です。 最終的には免疫細胞だけでなく、自分が臨床で従事していた癌を含めた様々な疾患や多様な臨床情報に対して応用することで、社会に貢献できるような成果が得られるよう努力したいと思います。