2019年度

女性研究者へのメッセージ

2019年度女性研究者へのメッセージ

財団役員
理事長 熊ノ郷淳
大阪大学 大学院医学系研究科 教授
アステラス病態代謝研究会は生命医科学研究を奨励し、国民の保健と医療の発展及び治療薬剤の進歩に貢献することをミッションに掲げています。そのミッションを遂行する中で、今後の我が国の研究環境を如何にすれば次代の発展に繋がるように変革していけるかを常に議論・実践している財団です。女性には男性以上により多くの選択肢やキャリアデザインが想定されるかもしれません。その節目節目で女性研究者の皆さんを応援したいと思っております。
選考委員長 徳山英利
東北大学 大学院薬学研究科 教授
「生命科学の世紀」と言われている21世紀では、ライフサイエンス分野における女性研究者に対する期待と役割がますます大きくなっています。一方で、我が国における女性研究者、特にPIの割合は欧米諸国と比較しても高くありません。アステラス病態代謝研究会では、選考委員の先生方の中にも各分野を代表する女性の研究者を積極的に招聘し、また、民間財団としてのフットワークを活かしたきめ細かな視点から女性研究者の研究と留学を支援しようと議論を重ねる等、女性研究者支援を柱の一つとしてきました。様々なライフイベントやキャリアの中で、研究環境の整備や研究推進のための梃子として、本財団の助成を利用して頂きたいと願っております。
学術委員会長 後藤由季子
東京大学 大学院薬学系研究科 教授
多くの女性の研究者が思っておられる通り、私も「女性研究者」と呼ばれることには抵抗があります。「女性研究者」であるから特別にサポートするという考えに対しても昔は違和感がありました。しかし出産・子育てについて女性に負担が偏る社会になってしまっている事実と、女性が少ないために若い女性が将来活躍するイメージを持ちにくいという事実は如何ともし難く、女性が不利を被る時期にサポートすることは社会的に必要であると今は強く感じています。本財団の選考委員会では、サイエンスを第一に選考を行いつつ、ライフイベント等研究者の方のご事情をも考慮するという形で、女性の研究者の方々を微力ながら(心の中では精一杯)ご支援させていただいています。積極的なご応募をお待ちしております。
評議員(前理事長) 児玉龍彦
東京大学先端科学技術研究センター がん・代謝プロジェクトリーダー
<ご意見をお寄せください>
女性の社会進出の度合いは、その社会がどの程度、一人一人の個性を大事に、一人一人を生かしているかのもっとも良い指標と考えられてきました。生命科学と医学薬学の研究を通じて治らない病気の画期的な創薬での治療をめざすアステラス病態代謝研究会は、女性の皆さんのこの領域への参加を心から期待し、どうしたらそれを支援していけるか、日々考えています。少子高齢化社会とはバブル崩壊以降、日本社会がいかに女性の方をはじめ、一人一人を粗末にしてきたかの失われた25年の歴史的な集積です。女性の社会参画を支援し、同時に、妊娠、出産、子育てを女性だけの問題とせず、社会全体で支えていくことが重要です。当財団では、まず女性の活躍について当事者である女性役員を中心としたワーキンググループからの提言を受けそれを第一歩としました。次は、科学者、研究者、技術者からの女性参画への提言、ご意見を求め、それを当財団の今後の助成活動に反映させていきたいと考えています。ご意見をお寄せください。
評議員 大隅典子
東北大学 副学長
サイエンスの能力に男女の差はありません。男性の方が少しだけポジティブ・シンキングなだけです。ノーベル賞受賞者に女性が少ないのは、歴史的にサイエンスの世界に参画できたのが当時、たまたま男性であったからです。サイエンスの門戸は現在、女性にも等しく開放されています。ただ、女性が手を挙げることが少ない、良い意味でのアグレッシブさが足りないということが一般論として言えるように思います。もしかしたら、子育て中の方で申請書を書く時間が無いと考える方もいるかもしれません。「どうせ採択されないかも……」と考えるのではなく、「駄目でも職を失う訳ではない」のですし、研究の構想を練ることは何より良いブレイン・ストーミングになります。本財団はこれまでより女性研究者をエンカレッジすることを推進してきました。どうぞ貴女の研究の魅力を満載にした提案を持ち込んでみて下さい!
理事 山下敦子
岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 教授
現在、大学理系学部で学ぶ学生の約1/3が女子学生ですが、実際に研究者として活躍している女性の比率は1/5弱、リーダー的役割にある女性の比率は1/10程度と、キャリアを重ねるごとに比率が減少しています。アステラス病態代謝研究会では、女性が研究者の道を進むにあたって何がハードルとなっているのか、そのハードルを乗り越えるために財団としてどのようなサポートができるのか、ワーキンググループや役員会での議論を重ねました。そこで得られた1つのコンセンサスは、「選考では科学的評価を第一義に、ライフイベントなど研究活動の中断・制限となる要因へは配慮を」という方針です。例えば、助成課題の研究実施期間に妊娠・出産などのライフイベントが重なった場合は、報告書の提出期限延長や、翌年度の研究報告会で発表いただくなどの配慮を行っています。助成研究の推進の障害となるご事情がありご相談されたい場合には、まずは事務局にご連絡いただければと思います。みなさまの研究への思いと素敵な研究アイデアが、いろいろな困難に負けず花開くよう、本財団がみなさまのサポーターの1つになれれば幸いです。
2018年度研究助成金受領者
荻野 由紀子
現所属:九州大学農学研究院 国際農業教育・研究推進センター
研究を発展させるために挑戦的な実験を組みたいとの思いから本助成金に応募しました。 新たな研究室の立ち上げ途上であり、研究体制を整える上でも大変助けとなっています。小学生と保育園児の育児と研究・教育活動の両立、新たな研究室の立ち上げが思った通りにはいかず、心の余裕を失い消極的な気持ちになることもありましが、そんな時こそ、助成金に応募することで、研究の展開や独創性を見直し、挑戦的な気持ちを維持することができました。本助成に採択された際は、研究を評価いただき大きなチャンスを頂いたと実感しました。本助成のお陰で新たな共同研究が生まれ、かけがえのない研究基盤を得ることができました。本助成は様々な背景の女性研究者が、夢を抱いて、更に活躍できるチャンスを与えてくれます。
姜 秀辰
現所属:大阪大学 免疫学フロンティア研究センター 免疫機能統御学
この度、本研究助成金に採択頂けたことを名誉に感じております。貴助成支援により優れた研究を行っている身近な先輩方の姿に憧れ応募致しました。女性研究者への支援や門戸を広げる動きは随分前から始まっている様ですが、現実としてはおそらく全世界的に、大きく増えているとは言えない状況だと思います。その中で女性研究者が頭角を現すには、全体から占める割合から考えても、道は険しいと思います。女性特有の出産なども大きな妨げとなるでしょう。けれども、研究に対する情熱と探求心、忍耐力は勝れども劣ることは無いと、私は信じています。もし、この先自分の進む道に迷いが生じた時には、今回この様に自分の研究を理解下さり、支援いただけたことによる自信が大きな力となると思います。だから女性研究者もこれからは臆さず、どんどん自分の研究を認めて貰えるチャンスを活かしましょう。
齋藤 史路
現所属:金沢医科大学 医学部 免疫学講座
女性研究者は、働き盛りの時のキャリアアップに重要な一番大事な時期を妊娠、出産、育児に費やすことになり、キャリアを中断させたり、研究に費やせる時間が限られることが多々あります。結果、周りの研究者から遅れをとるため、業績も出せず焦るばかりです。そして自信をなくしたり、モチベーションが下がってしまうことが私にもありました。アステラス病態代謝研究会の助成金はそんな女性研究者にも広く門戸を開いています。採択されるかどうかわからないけれど、出してみないことには採択されることはないので思い切って申請し、「採択」という結果を頂いた時にはものすごく嬉しかったですし、さあ頑張るぞ、とモチベーションが一気に上がりました。もちろん出産や育児に関係のない女性も、採択されればそのことがきっかけでまた新たな道が開けることもあります。ですので、申請を悩んでいる方は是非思い切って申請してみてはいかがでしょうか。
坂本 愛子
現所属:東京大学医学部附属病院 循環器内科
この度は貴財団の研究助成にご採択いただき、心より御礼申し上げます。積極的な学会発表、そして論文報告は、研究者として自立していくための基本である、というお言葉を、大学院生の頃に頂戴しましたことがございます。これまで、そのお言葉を心に銘じて研究を進めてまいりました。貴財団の研究助成に応募させていただこうと思いました契機も、その延長線にございましたように感じております。高校まで女子校で過ごしました一方で、大学以降は男性の多い学校や職場におりますので、初めはその変化に戸惑うこともありましたが、男女の区別なく、まわりの先生方からそういったお言葉をいただけます環境におりますことに、私自身、日々感謝の気持ちでおります。今後も女性ならではの視点や心を大切にしながら、積極的に研究に取り組んでまいります所存でございます。
笹井 美和
現所属:大阪大学 微生物病研究所 感染病態分野
私が助成金を申請する時にいつも思うのは、『チャンスがあるなら挑戦しよう!』です。もちろん、採用されるかどうかはわかりません。しかし、出さなければ絶対に採用されることはありませんし、また、採用されなくても失うものはなにもありません。出さなきゃ損ですよね?
「助成金を出そう」と考えるということは何かアイディアがあるということであり、アイディアがあるタイミングで常に助成金の申請があるとも限りません。チャンスがあるのであれば、チャンスを生かさないと勿体ないです。獲得した助成金を元にアイディアを形にしていき、また次のアイディアを生み出すということを繰り返すことにより、一歩ずつ前に進んでいけると思います。先ずは、挑戦してみましょう!
杉山 清佳
現所属:新潟大学 大学院医歯学総合研究科 神経発達学分野
 一般的に、30-40代はキャリア形成期であると同時に、ライフイベントと向き合う時期でもあります。私もライフイベントにより、研究者としては「堪」の時期を過ごしてきました。一方で、こどもを通して地域社会とつながり、社会が研究者に求めることを直に感じられることは、「こどもの脳の発達」を研究テーマにする身としてはとても貴重なことです。その点において、助成金の申請は「社会に還元できることは何か」を考える良い機会でもあります。
 いまだ重要な局面において、「男性は期待値、女性は実績値で評価される」といいます。性別に関わらず、自他共に満足な実績を積むのはとても難しいことです。さらに目先の実績にこだわると、過去を踏まえた守りの研究に固執してしまいます。ならばなおさら、今を大切に、自分のやりたい研究にまっすぐに挑んで、社会に貢献することを目指したい。研究助成金の獲得は、その一歩を踏み出す力になると思います。
寺島 明日香
現所属:東京大学 大学院医学系研究科 骨免疫学寄付講座
私は修士課程で学芸大飯田秀利先生に師事し、博士課程では千葉大中山俊憲先生のラボに籍を置かせて頂きつつ谷口克先生の元で研究に励みました。ポスドク時代から現在まで、東大高柳先生のラボで研究に従事しています。ラボにも恵まれまして、女性であることを不利益に感じたことはございませんでした。本助成金は「特に応援したい人」に「女性研究者」と明示されております。この要項を拝見した時、出産育児を経験した方が対象なのだと思い、正直「私は当てはまらないのでダメかな」と考えました。しかし、こちらの項目を(誠に勝手ながら...)女性研究者激励と捉えまして、思い切って応募させて頂きました。幸運なことに、このような私でも採択頂きまして大変嬉しく思います。複合的な理由で女性研究者の割合が少ないことはご存知の通りです。本助成金は様々な女性研究者を積極的に応援する事で研究の多様性を広げている貴重な助成金だと実感しております。
佐田 亜衣子
現所属:筑波大学 生存ダイナミクス研究センター
 日本の研究社会は、女性がマイノリティであり、孤独や不便、憤りを感じることも多いと思います。結婚や出産・子育てと研究を両立しようと、必死に頑張っている方も多いと思います。私自身も、ポスドクのときにアメリカで出産し、現在はテニュアトラック助教として、研究と子育てに奮闘する日々です。
 そんな私たち、女性研究者や若手研究者をサポートしようと、多くの人が声を上げ、日本の研究環境を少しでも良い方向へ変えようと動いてくださっています。本助成金を始め、女性・若手研究者を支援する制度は、着実に増えていると実感しています。このチャンスを最大限に生かし、しっかり結果を出すことで、次世代へとつながっていくと私は信じております。全ての研究者が、自分らしく、生き生きとハッピーに研究できる社会を実現するため、互いに励まし合いながら、一緒に研究を盛り上げていきましょう!!
平野 有沙
現所属:筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構
助成金申請の時期はちょうど第一子の妊娠が判明し、今後の研究環境が大きく変わると予想される頃でした。大量のマウスの維持が難しくなったことから急遽、技術補佐員の雇用費用も必要となり、このまま研究プロジェクトが進められるのか不安にもなりました。このような状況で、有難いことに本研究助成に採択していただき、育休復帰後も安心して研究に邁進できると心から感謝の気持ちでいっぱいです。女性はライフイベントなどでどうしても研究を中断せざるをえない、これまで通り研究に時間を割けなくなる機会が多くあります。でも、アステラス病態代謝研究会のように女性研究者の支援を積極的に行なっている財団もありますし、所属の研究機関でも支援制度が必ずあります。女性研究者の皆様には、このような様々なサポートを積極的に受け、研究を諦めないで続けていってほしいと思います。
吉田 陽子
現所属:新潟大学 大学院医歯学総合研究科 循環器内科学
私はこれまで約9年間研究を続けて参りました。大変幸運なことに指導者にも恵まれ、また出産などのライフイベントもなかったため、これまで女性であることをハンディキャップと感じずに研究に没頭することができ、そんな中でご採択いただいた本研究助成でしたが、その後妊娠し、今春に出産予定です。妊娠中に仕事を続けることは想像以上に大変で、出産後はさらに思うように仕事ができない状況になるのではないかと思いますが、周りの多くの方の理解と助けによって支えられ、ペースを落としながらでも何とか研究を続けている状況です。私もそうであったように女性研究者には人に迷惑をかけたり頼ったりするのが苦手な人が多いのではないかと思いますが、頼れるもの、助けてくれるものは何でも活用していけば良いのではないかと思います。本研究助成のような女性の活躍を支えるシステムが社会に定着し、様々な分野で活躍する女性が益々増えていくことを期待しています。
2018年度海外留学補助金受領者
木下 祐加
申請時所属:東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科
留学先:Sanford Burnham Prebys Medical Discovery Institute
私が海外留学を決めたのは、夫の留学がきっかけでした。当初は自分自身が何をするか決めかねていましたが、研究所のホームページで低ホスファターゼ症を専門とするMillan先生の研究室を見つけました。これまでの研究分野の知識を生かせるのではないかと思い、直接連絡をとったところ、研究員としての受け入れが決まりました。その後、「女性研究者からの積極的な応募を歓迎します」という言葉と、年齢制限がない点にひかれて、アステラス病態代謝研究会の海外留学補助金に申請しました。現在、これから始まる留学生活に不安と期待を感じつつ準備を進めています。その中で、アステラス病態代謝研究会の皆様からいただいた応援の言葉が心の支えとなっています。経済的な自立は精神的な自由につながると言われています。女性研究者にとっては、自ら補助金に応募することが、研究生活における自由と自信につながるのではないかと思います。
小長谷 有美
申請時所属:京都大学 大学院医学研究科
留学先:スタンフォード大学
この度は貴財団の海外留学補助金に採択頂き、誠にありがとうございます。私は研究業績が少なく、これまでにフェローシップに採択された経験もありませんでした。また単身で海外へ留学することや将来への不安が全くなかった訳ではありません。正直なところ申請時には「頑張ったところで、まただめかもしれない」との思いがありました。しかし海外留学補助金は「業績だけでなく留学先の研究を通してどのような研究者になることを目指しているのか」を選考基準としていることや、「広義の生命科学関連領域」を対象としていること、「女性研究者からの応募」を奨励していることに勇気づけられて応募に至りました。今回の経験は研究者としての第一歩を踏み出す自信につながりました。今後は、頂いたチャンスを存分に活かせるよう一層精進する所存です。
山田 恵子
申請時所属:順天堂大学 医学部 麻酔科学・ペインクリニック講座
留学先:マギル大学
サイトにアクセスし、文章を読んでくださっているのは、きっと多かれ少なかれ、海外で研究したいという考えが既にある方々じゃないかと思います。私もそんな一人でした。私がこちらの留学助成金を知ったのは、いくつかの助成金獲得に失敗し、1年なら私費で賄えるギリギリの資金を元手に日本を飛び出し、カナダにやってきた後のことでした。ダメなら一時帰国してバイトしようと考えていました。そこに蜘蛛の糸が!海外留学は魔法の杖ではないので、日本で抱える問題を消し去ってくれることはありませんし、極端に世界が切り替わることもありません。逆に、これまで日本で培ってきた考え方、身のこなし方の続きで生活全般はクリアできるので、何も恐れることはないということもわかってきました。あなたが将来の明確なビジョンはあるのに、日本の同調圧力にくたびれている研究者なのだとしたら、この補助金へのチャレンジで問題が解決するかもしれません。

(注)
現所属:2018年4月1日現在
申請時所属:申請時にすでに留学を開始されていた方は留学直前の所属機関です。