2018年度

女性研究者へのメッセージ

2018年度 女性研究者へのメッセージ

財団役員
理事長 熊ノ郷淳
大阪大学 大学院医学系研究科 教授
アステラス病態代謝研究会は生命医科学研究を奨励し、国民の保健と医療の発展及び治療薬剤の進歩に貢献することをミッションに掲げています。そのミッションを遂行する中で、今後の我が国の研究環境を如何にすれば次代の発展に繋がるように変革していけるかを常に議論・実践している財団です。女性には男性以上により多くの選択肢やキャリアデザインが想定されるかもしれません。その節目節目で女性研究者の皆さんを応援したいと思っております。
選考委員長 徳山英利
東北大学 大学院薬学研究科 教授
「生命科学の世紀」と言われている21世紀では、ライフサイエンス分野における女性研究者に対する期待と役割がますます大きくなっています。一方で、我が国における女性研究者、特にPIの割合は欧米諸国と比較しても高くありません。アステラス病態代謝研究会では、選考委員の先生方の中にも各分野を代表する女性の研究者を積極的に招聘し、また、民間財団としてのフットワークを活かしたきめ細かな視点から女性研究者の研究と留学を支援しようと議論を重ねる等、女性研究者支援を柱の一つとしてきました。様々なライフイベントやキャリアの中で、研究環境の整備や研究推進のための梃子として、本財団の助成を利用して頂きたいと願っております。
学術委員会長 後藤由季子
東京大学 大学院薬学系研究科 教授
多くの女性の研究者が思っておられる通り、私も「女性研究者」と呼ばれることには抵抗があります。「女性研究者」であるから特別にサポートするという考えに対しても昔は違和感がありました。しかし出産・子育てについて女性に負担が偏る社会になってしまっている事実と、女性が少ないために若い女性が将来活躍するイメージを持ちにくいという事実は如何ともし難く、女性が不利を被る時期にサポートすることは社会的に必要であると今は強く感じています。本財団の選考委員会では、サイエンスを第一に選考を行いつつ、ライフイベント等研究者の方のご事情をも考慮するという形で、女性の研究者の方々を微力ながら(心の中では精一杯)ご支援させていただいています。積極的なご応募をお待ちしております。
評議員(前理事長) 児玉龍彦
東京大学先端科学技術研究センター がん・代謝プロジェクトリーダー
<ご意見をお寄せください>
女性の社会進出の度合いは、その社会がどの程度、一人一人の個性を大事に、一人一人を生かしているかのもっとも良い指標と考えられてきました。生命科学と医学薬学の研究を通じて治らない病気の画期的な創薬での治療をめざすアステラス病態代謝研究会は、女性の皆さんのこの領域への参加を心から期待し、どうしたらそれを支援していけるか、日々考えています。少子高齢化社会とはバブル崩壊以降、日本社会がいかに女性の方をはじめ、一人一人を粗末にしてきたかの失われた25年の歴史的な集積です。女性の社会参画を支援し、同時に、妊娠、出産、子育てを女性だけの問題とせず、社会全体で支えていくことが重要です。当財団では、まず女性の活躍について当事者である女性役員を中心としたワーキンググループからの提言を受けそれを第一歩としました。次は、科学者、研究者、技術者からの女性参画への提言、ご意見を求め、それを当財団の今後の助成活動に反映させていきたいと考えています。ご意見をお寄せください。
評議員 大隅典子
東北大学 副学長
サイエンスの能力に男女の差はありません。男性の方が少しだけポジティブ・シンキングなだけです。ノーベル賞受賞者に女性が少ないのは、歴史的にサイエンスの世界に参画できたのが当時、たまたま男性であったからです。サイエンスの門戸は現在、女性にも等しく開放されています。ただ、女性が手を挙げることが少ない、良い意味でのアグレッシブさが足りないということが一般論として言えるように思います。もしかしたら、子育て中の方で申請書を書く時間が無いと考える方もいるかもしれません。「どうせ採択されないかも……」と考えるのではなく、「駄目でも職を失う訳ではない」のですし、研究の構想を練ることは何より良いブレイン・ストーミングになります。本財団はこれまでより女性研究者をエンカレッジすることを推進してきました。どうぞ貴女の研究の魅力を満載にした提案を持ち込んでみて下さい!
理事 山下敦子
岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 教授
現在、大学理系学部で学ぶ学生の約1/3が女子学生ですが、実際に研究者として活躍している女性の比率は1/5弱、リーダー的役割にある女性の比率は1/10程度と、キャリアを重ねるごとに比率が減少しています。アステラス病態代謝研究会では、女性が研究者の道を進むにあたって何がハードルとなっているのか、そのハードルを乗り越えるために財団としてどのようなサポートができるのか、ワーキンググループや役員会での議論を重ねました。そこで得られた1つのコンセンサスは、「選考では科学的評価を第一義に、ライフイベントなど研究活動の中断・制限となる要因へは配慮を」という方針です。例えば、助成課題の研究実施期間に妊娠・出産などのライフイベントが重なった場合は、報告書の提出期限延長や、翌年度の研究報告会で発表いただくなどの配慮を行っています。助成研究の推進の障害となるご事情がありご相談されたい場合には、まずは事務局にご連絡いただければと思います。みなさまの研究への思いと素敵な研究アイデアが、いろいろな困難に負けず花開くよう、本財団がみなさまのサポーターの1つになれれば幸いです。


2007年度研究助成金受領者
生沼 泉
現所属:兵庫県立大学 生命理学研究科 教授
交付時所属:京都大学 大学院生命科学研究科 助教
(2008年度研究助成金も獲得。2008年度最優秀理事長賞を受賞)
病態代謝研究会の助成金は、大学院を出て助教となった直後に獲得し、特に重要な意味を持っています。当時、この世界でのサバイバルの右も左も解らぬ私に、ボス(根岸学先生)が「自分で助成金を獲得することは、お金を取るということ以外にも意味があるから、どんどんチャレンジを」と強く背中を押して下さり、がむしゃらに申請書を書いた産みの苦しみの感覚は今も新鮮です。当時は「研究費ゲット!」以外の実感がなかったのですが、10年を経て、自らが教授となり振り返ると、「お金を取る以外の意味」とは「自分のactivityを自分自身あるいは周囲の研究者にvisibleにする(「見える化」する)こと」であったのだと思います。ひとりよがりになりがちな研究を自分にvisibleにする良い機会、さらに報告会では自らの成果をvisibleにできる機会がありました。これらを通じ、いつしかプロ意識の目覚めが起こったのだと思います。さあ、今度は私が皆さんの背中を押す番ですね!
伊達 紫
現所属:宮崎大学 理事
交付時所属:宮崎大学フロンティア科学実験総合センター 教授
「小さいながらも楽しい我が家(研究室)」が欲しくて、10年前に教授になりました。チップもチューブも自分で買わなきゃ誰も買ってくれません。アステラス病態代謝研究会からの研究助成は大変ありがたく、また、次の研究へのモチベーションにもつながりました。はじめて指導した女子修士学生はミラノ大学の博士課程に合格、当時の女性助教は准教授に昇進、女性特任助教は昨年4月から他大学の教授にと、それぞれの道を力強く歩いています。女性研究者を取り巻く環境が厳しいのは100も承知。私自身も仲間を見つけられずに残念な思いもしました。ただ、立ち止まっている暇はないよ、積極的に手を挙げて、どんどん仲間を増やしましょう。自分という素材をあきらめないで真摯に取り組んでいれば、きっと道は拓けます。Boys and Girls, be ambitious!
星野真理
現所属:岐阜医療科学大学 保健科学部 教授
交付時所属:理化学研究所 研究員
所属機関では外部資金を獲得する事が勧められており、貴財団の助成金に申請しました。採択された際は大変驚き、また嬉しく思い、私が歩んでいる道は間違ってはいないという自信につながりました。
 十年が経ち、研究員から大学教員になりました。大学運営と教育が職務の中心となり、時間的・設備的・金銭的にも研究を続ける事が難しくなり、一度は研究を諦めました。しかし、周りの仲間から、今できうる自分の研究をすれば良いとアドバイスを受け、もう一度コツコツとできるだけの事をしていこうと思う境地にたどり着いています。
 環境・体力ともに女性は、男性と同様には、研究に集中していくことが難しいため、業績主義の研究社会で女性が生き抜くことは難しい状況です。それでも、これまで研究ができる機会を与えてくれた方々に感謝をしながら、世の中に還元できる研究成果を得るために、周りの方々と協力しつつ、これからも研究を続けていけたら嬉しいです。
加納純子
現所属:大阪大学蛋白質研究所 独立准教授
交付時所属:京都大学 大学院生命科学研究科 助教
私は、京都大学にて長年助教を務めた後、平成20年に大阪大学のテニュアトラック准教授として独立ラボを持ちました。幸いなことに、ラボ立ち上げの1年前(平成19年度)と1年後(平成21年度)にアステラス病態代謝研究会の研究助成をいただきました。1回目の研究助成をいただいたのは、独立ポジション探しがなかなかうまくいかず疲れていた時でしたが、周りの受賞者の方々のようにやはり自分も独立ラボを持って研究をしたいと強く感じました。独立直後に2回目の研究助成をいただいた際には、研究費や人材不足のことなどで色々苦労はありましたが、これからも頑張りなさいと背中を押されているように感じました。このように、私のキャリアにとって重要な転換期の二度にわたるサポートによって、大きな勇気と活力をいただきました。女性研究者の皆さん、アステラス病態代謝研究会の研究助成に応募して、是非一歩前進、キャリアアップを目指してください!


2007年度海外留学補助金受領者
小林亜希子
現所属:京都大学 大学院医学研究科 助教
交付時所属:筑波大学人間総合科学研究科
留学先:コールド スプリング ハーバー研究所
渡米研究留学してから10年になります。今、これまでの研究生活を振り返ってみると、総じて研究を楽しんで続けてきたと幸いにも言えると思います。もちろんいいことばかりではありません。おそらく女性に限らず研究を志すものにとって結果が見えないときに迫るプレッシャーは常に存在すると思います。その中でやはり海外留学生活は私にとって多くを学ぶ機会になりました。ボスは女性でしたし、留学中に知り合った研究者、博士課程の学生たちの多くは女性でした。彼女たちは人生の様々なステージにおいて、出産・育児を両立させながら目標に向かって進んでいました。その後日本に帰国し、女性をとりまく研究環境の違いの大きさを実感する一方、留学中の経験を糧に今まで研究を続けることができたことはありがたいことだと思います。私のようにこれからも少しでも多くの女性研究者の機会が本留学補助金支援により拓かれることを祈念してやみません。


2012年度研究助成金受領者
大内淑代
現所属:岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 教授
交付時所属:徳島大学 大学院ソシオテクノサイエンス研究部 准教授
(2009年度も研究助成金獲得)
これまでに二度、アステラス病態研究会より研究助成頂きました。萌芽的研究へご支援賜り、心より御礼申し上げます。現在の私どもの研究の礎を築く糧になったと実感しています。私は、工学系に長く、現在では医学系に在職し、周囲に女性が極めて少ない環境にいます。従って、自分が女性であることも忘れてしまうくらいです。ひとくちに「女性研究者」と言っても環境が様々に異なるでしょう。それぞれがビジョンを持ち、「自分が最も究めたいテーマ」を選択することが重要だと思います。最善を尽くして研究に邁進することが、後進の手本となり、持続可能な世界の実現に貢献できると信じています。
河合佳子
現所属:東北医科薬科大学 医学部 教授
交付時所属:信州大学医学部 准教授
「やりたいことをやりたいように」
私は、まだ形成外科の女医が少ない時代に形成外科に進み、子連れで留学し、そのあと研究と教育をメインとする基礎系の大学教員の道に進みました。少なくとも自分の周囲にはこのような経歴の人はいなかったので不安もそれなりにはあったのですが、本気でやってみたいと思えれば突破口はみつかるものだと実感しています。よく「ロールモデルを見つけよう」というようなフレーズを聞くことがありますが、私は、ロールモデルは必要ないと思っています。先駆者が出来たからといって自分も出来るというわけではないし、先駆者がいないから自分も出来ないということもないのです。どうか根拠のない思い込みで自分の未来の選択肢を狭めないでほしいと思います。
やりたいことをやりたいように。もちろん、周囲に迷惑をかけない範囲で、ですが。
女性研究者のみなさんのさらなるご活躍をお祈りしています。
高山優子
現所属:帝京大学 理工学部 准教授
交付時所属:帝京大学 理工学部 助教
(2014年度も研究助成金獲得)
私はこれまで貴財団の研究助成金を2回いただいております。女性としては恥ずべき"がめつさ"。しかし、研究を進めるために、時にはしたたかさも必要です。研究推進において、私は研究に対する情熱が重要だと思っています。現在、小学校の息子の生活リズムに合わせて仕事を調整するため、研究時間を確保することが難しいときもあります。しかし、あきらめずに地道に努力し続けている姿は、必ず誰かが見ていてくれて応援してくれます。すると、応援してくれる方々を裏切らないようにと、研究への励みになります。このようなポジティブフィードバックを進めるためにも、ぜひ情熱ある申請書を作成して助成金に挑戦してください。
佐藤明子
現所属:広島大学 大学院総合科学研究科 准教授
交付時所属:同上
(2016年度も研究助成金獲得)
2度も貴財団の研究助成金に採択していただき、ありがとうございました。はじめの採択時は、広島に研究室を移動した直後で、研究体制を整える上でたいへん助けになりました。特に、上の子供が小学4年生になる年であり、学童保育などの国や市の援助も受けられず、どのようにして育児と研究の両立が図れるのかと悩んでいたときでした。いつも育児と研究の両立を目指しつつも、時間的余裕さらには心の余裕を失い、それは不可能なことだと落ち込んでしまうこともあります。そんなときに採択の知らせが届き、元気が湧いてきて頑張れました。初めの採択から5年が経ち、振り返ってみると、子供は成長し徐々に研究に集中できる時間が増えていることを実感します。育児と研究の両立に自信がなくなることは誰にでもあると思いますが、自信を失ったときこそ積極的に応募してみてください。
幸谷 愛
現所属:東海大学医学部 教授
交付時所属:東海大学 創造科学技術研究機構 特任准教授
本助成金に採択して頂き、華やかな贈呈式を催して頂いたのが昨日のように思います。あっという間の5年でしたが、振り返りますと、研究者人生の中でも特に激動の時期であったと思います。当時は任期付きのPIとして2年目の駆け出しであり、研究費を獲得し論文を出すことに必死でした。そんな中、著名な研究者が採択を受けておられた本研究助成金に採択されたことは大きな喜びでした。その後、専任登用、昇格、その間、ラボでも様々な出来事が起こりましたが、おかげさまで、本研究助成の採択テーマは、先週Minor Revisionとなり、もう一歩というところまで来ました。今後は、本研究テーマを礎に更に研究を発展させていきたいと願っております。
さて、女性は男性に比べるとライフイベントが多いと思います。この5年を振り返っても、小学生だった子供の学童保育や中学受験と、子育てイベントが続きました。更に家族の病気も発覚しました。今後も親の介護等、まだまだライフイベントが起こると思われます。これらが研究活動の負担にならないと言えば嘘になります。しかし、これまでのキャリアを振り返ると研究と家庭生活は各々が補完していると痛感します。精神面においては、研究が辛いときは家庭が憩いとなるのは当然ながら、逆もしかり。実務面においても、研究が子供の地域活動で役立ったり、逆にそこで知り合った異業種の人々からラボ運営に役立つ教えを多く受けました。是非、これからの若い女性研究者には、本研究助成金のように女性研究者を応援してくださる助成金、制度を生かして、ライフイベントと研究活動の両立を図って、双方に生かして頂けたらと願います。


2017年度優秀発表賞受賞者
斉藤典子
現所属:がん研究会 がん研究所
世界人権宣言の起草者で元アメリカ大統領夫人のEleanor Rooseveltは、多くの名言を残されています。“Woman is like a tea bag; you never know how strong it is until it's in hot water.” はそのひとつです。私のまわりにいるリーダーシップと真の強さをもつ女性達をうまく言い表しています。私は数年前に乳腺外科医師の大学院生と一緒に、乳がんに関わるノンコーディングRNAを見つけてEleanorと名付けました。海外の研究者にも親しみをもって覚えてもらいたいと考えたところ、このEleanor Rooseveltが頭に浮かんだのです。今後私は、人生や家庭を大切にしながら、時に強い気持ちで挑戦していきたいと思います。研究助成は大きな励みになりました。一緒に悩み成長する同好の士がますます増えることを願います。


2017年度研究助成金受領者
伊藤綾香
現所属:名古屋大学 環境医学研究所 特任助教
(2009年度海外留学補助金を獲得)
どうしても海外で研究に携わりたいと、本財団より助成して頂いてから早8年、この度、帰国して新たに研究を開始するにあたって研究助成に採択して頂きました。留学中には言語の壁や文化の違いに戸惑い、研究が思うように進まないこともありましたが、今後日本で研究を発展させ、教育に携わり、社会貢献したいと思うときに、留学中の経験やネットワークは大きな財産であると強く感じます。留学先では女性研究者が多く活躍しており、ほぼ全員が産休や育休を終えて無理なく研究に復帰していました。そんな彼女たちを見て、私自身も研究生活と私生活をバランス良く楽しめるようになり、視野を広げることができました。女性研究者を積極的に支援して下さる本財団の機会を有効に活用して、ますます多くの助成研究者が活躍できることを期待します。「女性だから」ではなく「わたしだから」採択して良かったと思って頂けるような研究者になれるよう、精進致します。
白壁恭子
現所属:立命館大学 生命科学部 特任助教
私は小学6年生と1年生の2人の子供を持つ女性研究者です。研究に割ける時間が限られるからこそオリジナリティのある研究をと心がけ、「できる事をできる時にできるだけ」をモットーに、任期性ポストを繋げながら個人型研究を行ってきました。論文数が十分ではなく競争的資金がなかなか獲得できなかったのですが、個人型研究や女性研究者を応援するという病態代謝研究会の趣旨を知り、思い切って応募して幸いにも採択していただきました。そして本助成金採択も幸いしたのでしょう、立命館大学にテニュアポジションを獲得し研究室を持つこともできました。諦めるのは簡単ですが、思い切って一歩踏み出すことで確実に状況は変わります。私の一歩を後押ししてくれた病態代謝研究会に心から感謝するとともに、応募を検討している女性研究者の皆様にも勇気ある一歩を踏み出し、道を切り拓いていただきたいと考えています。
荒井 緑
現所属:千葉大学 大学院薬学研究院 准教授
学部生の頃、女子学生がいない厳しい研究室に飛び込み、男性と差が出ないよう髪を短くしていました。私も「女性研究者」と見られるのに抵抗を感じてきた一人です。しかし、女性に対する「無意識のバイアス」が拭えない日本では、女性への積極的支援が必要と今では思っています。
女性には出産、育児、介護など、様々な出来事が起こります。私は母が修士の時にくも膜下出血で倒れたため、介護関連で苦労をしてきました。男女では体の造りも異なり、体力の差もあります。このためか、特に有機化学の世界では女性研究者が少なく、若いアカデミアの方も減ってきているように感じます。
女性だから、の不利益を感じない日本になって欲しいです。そのためには、女性を積極的にサポートする社会の仕組みが必要と思っています。女性を応援してくださる本研究会の取り組みに心から感謝いたします。女性研究者のみなさん、壁は多いですが、負けずに頑張っていきましょう!
白鳥美穂
現所属:九州大学 大学院薬学研究院 助教
私が本助成金に応募したきっかけは、ある先生から応募してみたらどうかと声をかけていただいたことがきっかけでした。これまでも本助成金の存在は知っていたのですが、過去に受領されていた先生方は経験、実績共に豊富か、留学から戻られたばかりか、新しく研究室を立ち上げたか、出産育児を経験されているかのどれかに当てはまっているような気がしていました。私自身はどれにも当てはまらないので、応募しても厳しいかもしれないと思いながら、とりあえず今の自分ができることをして、それでだめだったら仕方ないなという気持ちで応募したところ、大変幸運なことに助成金を頂けることになりました。本助成金は特殊な事情の有無や老若男女問わず、良い研究をしたいと願うすべての人に等しくチャンスがあるのではないかと感じています。
高橋倫子
現所属:北里大学医学部 生理学 教授
過去には、新しい研究プロジェクトに挑戦するタイミングで応募いたしました。生物物理学的な手法を主軸とする研究室に、分子生物学的な実験系を組み入れる上で、多大な支援をいただきました。このたびは、研究室を新たに立ち上げるタイミングで応募しました。
助成の申請は、自らが志す研究の方向性や独創性にあらためて向き合う機会になります。また、挑戦し、研究を継続する上で、かけがえのない基盤を得られる可能性があります。過去には「一言の薦め」をきっかけに、研究費申請を検討し始めた経験がありますが、このような「後押し」にあたる、多様な研究者を応援する姿勢が、明示されている研究会であると受けとめております。貴重なチャンスの活用を、多くの方が検討されることを期待しております。


2017年度海外留学補助金受領者
加賀麻弥
申請時所属:順天堂大学 大学院医学研究科 助教
留学先:フランス国立保健医学研究機構 イマジン研究所
海外留学助成金に採択頂き、ありがとうございます。研究留学を夢にしながら、様々なライフイベントを経験し、卒後15年目での挑戦となりました。留学先には、3名の研究者が順に紹介を取り次いでくださる形で縁を得てから、履歴書を計3回、間をおいて送りました。しかし返事はなく、諦めかけましたが、国際学会で直接お会いし道が開きました。今回の選考において、断続的に細々と続けた自分の研究を、多分野で研究される審査員の先生方に評価して頂けたことは、大きな励ましとなっています。20代、30代の研究生活は大切ではありますが、特に女性研究者は年齢にとらわれすぎない柔軟な価値観も時には重要、と思っています。経済効果を期待し難い希少疾患の研究が日本でも進むこと、それらに、患者を直接知る臨床医が積極的に関わっていくことを願っています。渡航中に、研究内容を文化的背景も意識して学び深めたいと思います。
後藤容子
申請時所属:京都大学 大学院医学研究科 助教
留学先:スタンフォード大学
この度は、貴財団の海外留学補助金に採択いただき、誠にありがとうございます。
貴財団の趣旨に記載されている、「現在までの業績だけではなく、留学先での研究を通してどのような研究者になることを目指しているのかが選考の基準」「女性研究者からの積極的な応募を歓迎します」という文章に背中を押され、応募いたしました。
実際に米国に留学し、新しい環境で多様な価値観に触れるなかで学ぶことが多く、研究においても研究以外においても留学は貴重な経験であると強く感じています。また留学先の施設では多くの女性研究者が活躍していることにも刺激を受けています。
女性研究者であることは不利にも有利にもなり得ると思います。多くの日本人女性研究者が夢を抱き、ますます活躍できることを願っています。
峯岸 薫
申請時所属:横浜市立大学附属市民総合医療センター 助教
留学先:Duke-NUS Medical School
この度は、貴財団海外留学補助金に採択していただき心より御礼申し上げます。これまで日常診療を行いながら、関節リウマチ関連の臨床研究を続けてきましたが、医師および研究者としての経験を積んでいく過程で、結婚・妊娠・出産など、家庭と研究活動の両立は、周囲のサポートがないと難しかったです。生後4か月の双子を連れての留学開始となりましたが、日本の勤務先では生後8週から保育園を利用することができ、産後の早期復職も可能でした。留学先のシンガポールは既婚女性の就労率が高く、保育施設やベビーシッターなどのサービスも整っていますが、シンガポールは家族同伴の就労ビザの給与基準が高く、乳児の保育費用も高額のため、貴財団の助成なくしては家族と一緒の渡航は実現できなかったと思います。今回の留学生活が今後の日本の女性研究者のキャリア形成にもつながるような成果を出せることを願っております。

(注)
現所属:2018年4月1日現在
申請時所属:申請時にすでに留学を開始されていた方は留学直前の所属機関です。